本誌の巻頭には、女子栄養大学学長が代々、その折々の言葉を綴ってきました。現在は「きょうも元気に」と題して、川崎由紀さんのやわらかいイラストを添えて、香川明夫学長が連載しています。
5月号の巻頭言では、新学期の身体測定の話題にちなんで、「子どもの足が短くなっている!?」のタイトルで、長年子どもの発育を研究してきた小林正子さんの著書『子どもの足はもっと伸びる!』を取り上げています。
その内容をちょっとご紹介しましょう。くわしくは本誌をご覧いただけると嬉しいです。
「小中学校の新学期、クラスの皆で集まって、身長、体重、座高をはかった思い出はどなたもお持ちでしょう。ところが、2015年度を最後に、“座高“の計測が取りやめとなりました。
この座高の測定廃止を嘆いているのが、小林正子さんです。
小林さんは著書の中で、『今の子どもは足が長いという認識はもう過去のこと。現実には子どもの足は親世代より短くなっていて、こうしたプロポーションの変化の裏で、大きな健康問題がおきているのではないか』と指摘しています。
子どもたちの体位の変化は、単に見た目の問題だけでなく、体全体の発育を見るうえでとても重要なことであり、身体測定の“はかる“という行為が、健康を維持するうえで、様々な情報をあたえてくれることをこの本が教えてくれます。」(「きょうも元気に」より)
子どもの「胴長短足化」が進行中!!
「今の子は足が長くてスタイルがいいわね」といったのは、過去のことになりつつあるようです。
現在、日本の子どもの平均身長は、17歳の全国平均値でみると、最も高かった時代よりも3ミリ縮んでいて、さらにその中身をみると、座高は伸びているのに足は最も長かった平成7~10年頃より平均で1センチ短くなっているのです。(学校保健統計調査報告書)
また、「身長に占める足の長さの割合」が、親世代(30年前)より大きく減少しています。
しかもその割合は、小学校低学年では親の世代よりもプラスで過去最高値になっているのに、男女とも中学生になると突然マイナスに転じ、年齢が上がるにつれてその差は大きくなり17歳男子では大きく減少しています。
もう一例、ある中高一貫の女子校でのデータを示しましょう。
2015年の高校3年生とその親世代が高校生だった1986年当時との比較です。
・身長は2015年が最も低値
・座高は2015年が最も高値
・下肢長は2015年が最も低値
30年前の高3女子生徒のほうが、身長が高く足も長いことがわかります。
これから成長期を迎える子どもを持つ親にとっては、ちょっと衝撃的な事実ではありませんか?
「夜スマホは足が伸びなくなるよ!」
発育研究によると、思春期には足がまず伸びはじめ、続いて座高がぐんと伸び、その後また足が伸びる、という3段階で進行することが一般的な発育と考えられてきました。
ところが、先ほどの女子高生のグラフですが、よくみると、中学1年~中学3年までは、近年の生徒のほうが、身長が高かったのですが、その後伸び悩み、思春期後半で足の伸びが昔に比べて減少しているのです。
このような傾向はさまざまなデータから明らかになっています。
平成10年(1998年)頃から始まった胴長短足化の現象を説明できる要因は、子どもたちの生活に深く入り込み、その生活習慣に大きな影響をもたらした、携帯電話やTVゲームなどの電子機器、特にスマホではないかと小林先生は指摘します。
スマホの夜間長時間使用によるブルーライトの影響が、成長ホルモンの分泌を妨げているのではないかと論じています。
「夜スマホは足が伸びなくなるよ」というメッセージをぜひ子どもたちに伝えてください。
さて、先ほどの高3女子のグラフをもう一度ご覧ください。
足の伸びは止まっているものの座高は中3以降も伸びている傾向にあるので、思春期後半に足の伸びを促進するような生活をすれば、日本人の身長はまだ伸びる可能性があると考えられます。
子どもの足はもっと伸びる! という本書のタイトルのように。
関連書籍
『子どもの足はもっと伸びる!』
小林正子/著
A5判 160ページ/定価1,540円(税込)