2024年12月4日に、女子栄養大学駒込キャンパスにて「いろんな現場で実践可能!くるみの栄養と健康メリットを活用したメニュー開発のコツ セミナー」を開催。管理栄養士や栄養士をはじめ、食の現場で活躍されている方々が集まり、カリフォルニアくるみの魅力について学ぶ機会となりました。
セミナーの冒頭、カリフォルニア くるみ協会日本代表事務所の友田理絵氏から、日本でのカリフォルニア産くるみのシェアは約96%以上を占め、私たちが生活の中で手にとったり、食したりするくるみは、ほとんどがカリフォルニア産のものということをお話しいただきました。今回は、そのカリフォルニア産くるみの機能性について女子栄養大学の蒲池桂子教授が講演。また、スポーツや給食の場面におけるくるみ摂取の方法やメニューの考え方について、第一線で活躍されている(株)グリーンハウスのお二人にお話を伺いました。
「知っていたようで知らなかった!くるみの栄養と健康効果」
くるみの機能性についてお話をする前に、まずは機能性の考え方についてご説明します。食品の機能性は1次、2次、3次と3つに分かれています。1次機能は栄養的な機能についてで、炭水化物など、主に体の維持に必要な成分についてです。2次機能については、嗜好的機能で味や香り、食感についてで、おいしさや風味、楽しさの側面についてです。そして近年注目されてきたのが3次機能で、生体調節機能を指し、抗酸化作用やストレス軽減、免疫力強化など、薬などの側面のことで漢方薬は3次機能に含まれます。くるみには、この3つの機能がすべて含まれていて、薬にも匹敵するぐらいのパワーを持った食材といえます。
くるみ1回分/30gの1次機能についてご説明します。特筆すべきは、オメガ3脂肪酸の多さで、ほかのナッツ類と比較しても格段に多いことが特徴です。特にα‐リノレン酸多く、血中コレステロールを減らしてくれる効果があるといわれています。くるみのコレステロールは0で、油分は多いのですが植物性のオメガ6脂肪酸でリノール酸です。さらに、α‐トコフェロールはビタミンEやビタミンB6が入っているので、ストレス軽減にも役立つといわれます。マグネシウムやカルシウムも多く含まれるので、たとえば牛乳にくるみのペーストなどを入れれば、たんぱく質もカルシウムも多く摂れます。
くるみに含まれるアミノ酸効果についてもお話ししようと思います。分岐鎖アミノ酸が多く含まれているので、筋肉を増やすことにも有用のようです。筋肉をつけるには、朝、たんぱく質を摂取すると良いといわれるので、朝にくるみを食べる習慣付けをするのもいいですね。3次機能で考えますと、動脈硬化の予防のほか、腸内細菌のなかでも有用な細菌が増加し、多様な種類の菌が増えるといわれています。腸内細菌は種類が多いと免疫力が上がるため、腸内環境を整えることにも有用です。これらはヘルシーエイジングに役立つ機能ですが、ほかにも不飽和脂肪酸の豊富なα‐リノレン酸が神経組織の構成成分になることで、脳にも好影響といわれています。
アスパラギン酸が疲労回復をしてくれたり、免疫力を高めるアルギニンも含まれ、2次機能となる旨みの元のグルタミン酸も含まれます。旨味成分が豊富なことから減塩効果にもつながり、体にさまざまな好影響を与えてくれます。くるみは硬いため、よく噛むことで脳にもよく、噛めば噛むほど味わい深くなることで食欲も抑えられ、ダイエットにもつながるなど、その健康効果は大きいといえます。
アメリカでの高齢者に対する調査の結果をお伝えしておきましょう。65歳以上の高齢者約3万人にアンケートを行ったところ、疾患のない高齢者はたった16%でした。その中で1週間に56g以上のナッツを食べている人は、健康に優位な数値が報告されました。そういったところからも、くるみが体に与える影響は決して小さなものではないと考えます。
みなさんは栄養士だからこそ、このくるみの機能性を学べて、情報を発信できることは素晴らしいことです。栄養士として、くるみの良さを、ぜひ広めてください。
アスリートの食事や補食に手軽に活用できるくるみの魅力
私からは、スポーツ部門においてのくるみの活用事例について主にお話をさせていただきます。まずは弊社のご紹介を少ししますと、株式会社グリーンハウスは創業77年で、食とホスピタリティの提案企業です。事業内容としましては、企業様の社員食堂や病院福祉施設の食事提供と学校給食といったコントラクトフードサービス事業を中心に行っています。レストランデリカ事業では、「とんかつ新宿さぼてん」をはじめとする各種ブランドを展開しているほか、ホテルマネジメント事業や海外事業、AI食事管理アプリ「あすけん」など、食に関するさまざまな分野で事業展開をしています。
早速ですが、くるみがアスリートにオススメな食材であるという理由ですが、まず挙げられるのがエネルギー源として優秀なことです。アスリートは運動量が多いためエネルギー補給が必須ですので、脂質やオメガ3脂肪酸が豊富なくるみは魅力ある食材です。ほかにもアルギニンやアスパラギン酸は疲労回復を助けたり、分岐鎖アミノ酸やビタミンB6が筋肉を作るサポートをしてくれるうえ、付いた筋肉をスムーズに動かせるようにするカルシウムやマグネシウムまで含まれているのです。試合や練習で脳や神経を集中させるときに多く消費する、ビタミンB群が豊富なのもいいです。加えて、食べたものを上手に消化して、栄養に変えるためには腸内環境が整っていなければならないので、食物繊維が豊富なことも良い点です。
アスリートのくるみ摂取の適量と摂取タイミングですが、体格や運動量によって異なるので一概には言えませんが、手の平に乗るくらいで1日に30gが取り入れやすい量かと思います。アスリートの摂取タイミングは大きく分けて3食の食事か補食になります。くるみは脂質が多く、噛み応えがあるため、適量であれば減量時の捕食としてもおすすめです。試合と試合の合間に補食として活用する場合には、くるみは消化に時間がかかるので、事前に練習の段階で試合を想定して合間に食べてみて、その後の運動パフォーマンスに影響が出ないかをしっかり確認して活用するのが良いと思います。また運動後のリカバリーにくるみを補食する際は、運動後早い時間で食べるのが良く、遅くとも30分くらいの間には食べる方がより効果的です。
私がサポートしているチームが具体的にどんな形でくるみを活用しているかというと、食堂の一角にプラスワンコーナーというのを設けて、くるみを含んだナッツ類やドライフルーツ、海藻を置いて、選手が自分に不足していると思う栄養を手軽に摂れるようにしています。選手たちは冷奴やサラダにかけて食べたり、そのまま食べたりしています。
また、試合時の補食としても活用しています。
くるみの豊富な栄養素を選手たちに摂って欲しいので、定期的に食事のメニューに組み込んでいます。炒め物にしたり、砕いてペースト状にしてソースに入れたりしています。中でも一番好評だったのがおにぎりに入れる方法で、本日提案する「ゴロっとクルミのチーズおにぎり」のように干しえびやチーズと一緒に入れてカルシウムも補ったり、じゃこや塩昆布と一緒に作ることもあります。みなさんもぜひアレンジをして、お好みのおにぎりを作っていただければと思います。
栄養豊富で和食・洋食・中華なんでも合うくるみは給食にぴったり
私は入社後、自動車メーカーの社員食堂で栄養士として、保健師さんとタッグを組んで健康フェアやヘルシー弁当の開発など、健康活動に携わりました。その後、複数の店舗のメニュー開発やメニュー管理を担当したり、健康イベントの企画や提案セミナーの講師を経験しました。今日は、事業所給食でのくるみの活用についてお話しをさせていただきます。
以前、くるみ協会さんと連携して、自動車メーカーの社員食堂でくるみフェアを実施しました。そのときは協会さんからレシピを紹介いただき、1週間分のメニュー提供を実施。そこでわかったのは、ガパオや坦々麺など、利用者の方に馴染みのあるメニューにくるみを加えたほうが選ばれやすいということでした。調理作業の中で難しいと感じたのが、大きなくるみを仕入れたため、現場で砕くという作業でした。ですからメニュー考案の際に、砕かず大きなまま使えて、おいしく食べられるメニュー作りが肝心と実感しました。
今回、配布したお弁当の中にもあります「鶏肉と彩野菜の韓国風くるみ炒め」は、くるみを砕かずあえてそのまま使って存在感を残し、食感を楽しめるようにしています。事業所の食事では、特に重労働で体を動かす方も多いので、白いご飯に合うおかずということを意識してメニュー考案の際にメイン料理として考えるようにしたのが、このメニューです。くるみのうまみ成分の作用により、減塩でも濃い味わいが実現でき、おいしく食べることができます。
事業所給食では、複数のメニューから好きなものを選ぶ形式が多いので、利用者の方に選んでもらえる内容でなければなりません。ポイントはボリュームと彩りだと思ったので、それを押さえながらオペレーションを工夫し、調理工程を組み立てました。事業所では、鶏肉が小さく物足りないと感じてしまうといけないので、下味をつけてから片栗粉にまぶし、その後揚げるという調理工程にしました。野菜は食べやすい大きさに切ったあと、キャベツ、玉ねぎ、長ねぎはスチームコンベクションで蒸し焼きに、ピーマンとパプリカは素揚げにして彩りよく仕上げました。くるみは生くるみをローストしたのですが、香ばしく仕上げるために2度焼きをしました。最初は130℃で10分焼き、全体を撹拌してから再度150℃で10分焼き、香ばしさを高めたのです。当日は、総利用者数140名に対し、80食を完売。全体の約60%の方が4種類のメニューの中からくるみメニューを選んでくれました。とても好評だったと思っています。
私が今回作成したメニューでは、野菜を119g使っていますが、時期によって旬の野菜などを取り入れたり、アレンジをしていただければと思います。事業所給食でくるみを使うことはまだほとんどないと思いますが、メニュー名にくるみと入れたり、目に見えてくるみが入っていることがわかると、利用者の方に選んでいただきやすくなると思います。そうするとアレルギーのある方は避けることもできるので、事業所では扱いやすい食材ではないでしょうか。
メニュー開発の際に、さまざまな調理を試しましたが、くるみは和・洋・中なんでも合うことがわかりました。今後、メイン料理にくるみを取り入れることを、社内でも提案していきたいと考えています。みなさまもぜひ、おためしください。
くるみレシピを実食
「ゴロっとくるみとチーズのおにぎり」 くるみ、干しえび、チーズが入った栄養満点のおにぎり
「くるみのブラウニー」 ビターチョコを使って甘くなりすぎない大人スイーツ
「鶏肉と彩野菜の韓国風くるみ炒め」 キャベツ、玉ねぎ、ピーマン、パプリカなど野菜と鶏肉をピリ辛コチジャン炒めに
カリフォルニアのくるみの収穫の様子を見せていただきました (編集部)
カルフォリニア州の中央を縦断し、多様な農産物の生産を支えているセントラルバレー。この中部に位置するHughsonで農園を経営するJohn Mundt 氏に、2024年10月、くるみの収穫から加工までの様子をご案内いただきました。
Mundt 氏は家族経営で6代にわたりくるみやアーモンド、桃などを栽培しています。
早速、くるみの収穫の様子をごらんいただきましょう。
くるみの木の幹をシェーカーと呼ばれる機械で揺らし、熟したくるみを地面に落とします。
地面に落ちたくるみは、木と木の間に寄せられ、ピックアップマシンで集めて24時間以内に貯蔵されます。虫がついたりしないよう、大量のくるみを短時間で効率的に収穫し貯蔵するのです。それゆえ、難しいのは収穫の時期。木によって状態は少しずつ異なり、早過ぎても遅すぎても風味や品質に影響します。見た目だけではなく、収穫前に実を少量とって食べてみて、味わいや熟し状態を確認し、慎重に収穫のタイミングを決定しているそうです。
加工・包装場では、各工程の説明の中で、温度と湿度についての説明が繰り返しなされました。くるみはn-3系多価不飽和脂肪酸が非常に豊富なことで栄養的な価値を高めていますが、これが酸化しやすく臭いへの影響にもつながります。輸出の増えた現在、くるみを遠方においしく届けるための研究や配慮が日々更新・実践され、品質維持のための温度・湿度管理が徹底されていることがうかがえました。