2025年6月5日に、女子栄養大学駒込キャンパスにて、「カリフォルニアプルーンの栄養価・機能性を知る“プ活栄養セミナー”」が開催され、食の現場の一線で活躍する管理栄養士や栄養士の方たちが集まりプルーンの栄養価や機能性について学びました。
カリフォルニアの温暖な気候の中で育ったカリフォルニアプルーンには、たくさんの栄養素が詰まっています。カリフォルニアプルーンについて、栄養学の専門家である3名の先生方に、その魅力を語っていただきました。
プルーンの腸内環境改善効果と健康長寿のためのヘルスフード
横浜薬科大学 総合健康メディカルセンター センター長 渡邉 泰雄 先生
今からだいぶ昔の話になりますが、先輩医師から統合失調症の患者さんは便秘や肥満の方が多い傾向にあるが、症状が良くなると便秘などが緩和されるので、腸と脳には関連があるかもしれない…という話を聞いたことがありました。ですが、現在では脳と腸の密接な関係がわかっており、「脳腸相関」の研究が進められています。
腸内には1500種以上、数100兆個の腸内細菌がいて、なかでも大腸に一番多くすんでいることがわかっています。腸内フローラの菌の構成を見ると年齢による変化があり、その変化が現れる年齢に体の変化も起こる傾向にあることがわかってきています。腸内フローラ(腸内細菌叢)をゲノム解析すると、健常な方と腸疾患がある方では腸内細菌の並び方が異なり、免疫とも関係することがわかりました。それがわずか20数年前のことです。
高血圧患者では、ヒト口腔内の優占種であるStreptococcus属が腸内で増加し、血管内皮細胞障害を誘発しています。またアルツハイマー患者はFirmicutesとActinobacteriaが減少し、Bacteroidetesが増加する傾向にあります。このBacteroidetesが産生する異常な多糖体がβアミロイドを神経線維に付着させます。そこで臨床試験でBifidobacterium breve A1を使用すると、加齢性記憶障害の改善は認められましたが、認知症の改善には至りませんでした。
ここで、少しプロバイオティクス、プレバイオティクスについてお話しましょう。これらの定義として、プロバイオティクスは「腸内細菌は、バランスを変えることにより宿主に保健効果を示す生きた微生物」(1989年、Fuller R, Journal of Applied Bacteriology)であり、プレバイオティクスは「宿主に保健効果を示す生きた微生物を含む食品」(1998年、Salminen S., British journal of Nutrition)とあります。どちらも腸内環境に変化が起こることで、人体への栄養学的保健効果、免疫学的保健効果、生活習慣病予防効果があるとされています。
先ほどのアルツハイマー患者へも、プロバイティクス、プレバイオティクスが主にLactobacillusやBifidobacteriumを活性化させて消化をよくしたり、ビタミン類を産生させたりして脳内の免疫機能の低下を防ぎます。さらに異なったプロバイオティクスを用いるとより効果的であるとされています。
私が提唱している「ヌルねば食材」は、和食独特のヌルヌルねばねばした食材で滋養健康食として昔から愛されてきました。食材のヌルねばの主原料はムコ多糖体(コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、ヘパリン、フコイダン、ペクチンほか)で、主成分は消化管の粘膜構成成分でもあるので、血液の流れや免疫機能の調整に関与しています。体内のヌルねば成分は年齢とともに減少するので、健康長寿を目指すなら積極的にとりたい食材です。
カリフォルニアプルーンについて、有益な研究結果が出ていますのでご紹介させていただきます。
まずは腸内細菌への影響についてですが、50-100gのカリフォルニアプルーンを12カ月間摂取すると、腸内細菌のラクノスピラ科が増加するなど、健康増進に役立つことが示唆されました。これによってカリフォルニアプルーンの連続的な摂取は腸内細菌叢の環境を改善する手段として有望といえます。また、閉経後女性の骨密度(BMD)を改善する効果も認められています。
骨のカルシウムへの影響としては、グルココルチコイド(GC)誘発性骨粗鬆症(GIO)の予防にプルーンが有効であることがマウスモデルを使った研究で実証されたり、50-100gのカリフォルニアプルーン連続摂取で骨量減少を予防し、抗炎症・抗酸化作用が確認されました。
さらにカリフォルニアプルーンの水溶性、不溶性の食物繊維が、腸内でのパイエル板、パネート細胞に刺激を与えて、T細胞の活性や抗菌ペプチド放出を促して、弱った免疫機能への活性化を行っています。
これらのことから健康には腸内フローラのバランスをよくすることが大切で、ヌルねば食材やプルーンなどで腸の粘膜をキレイに保つことが効果的なことがわかります。それには、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたシンバイオティクス、さらにはポストバイオティクスの摂取が有効といえるでしょう。カリフォルニアプルーンに含まれるβアミロイドは体内で異常たんぱくの沈着を抑える効果があるとされ、これからの高齢化社会では必要とされる栄養素です。私たちは高齢者の健康維持に関して医薬品を与えるのではなく、食で健康を支えていきたいと考えています。カリフォルニアプルーンを毎日食べて、健康長寿を送っていただきたいですね。
プルーンの健康効果 ~丈夫な体作りや体を鍛える上での、骨の健康の維持のためのプルーン摂取~
女子栄養大学 栄養生理学研究室 教授 上西 一弘 先生
プルーンの栄養価で特徴的なのは、食物繊維が含まれる中で、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が半分ずつ含まれていることです。さらに、ビタミンKやカリウムが比較的多く含まれていることも特徴です。
<食物繊維について>
食物繊維の働きとして、便秘に良いということは広く知られていますが、生活習慣病の発症率や死亡率との関連においても、有意な負の関連が報告されています。代表的なものに、総死亡率、心筋梗塞の発症と死亡、脳卒中の発症、循環器疾患の発症と死亡、2型糖尿病の発症、乳がんの発症、胃がんの発症、大腸がんの発症などに関連するといわれています。
現在の日本人成人の食物繊維摂取中央値は13.3g/日ですが、健康への好影響を考えると、1日あたり25gは摂取したほうがよいでしょう。
たとえば18~74歳までの女性は、食物繊維の1日の食事摂取基準が18g以上とされているので、1日3~4gプラスすることを目標にするにはドライプルーン50g(可食部)を食べることをおすすめします。ドライプルーン50gはだいたい5粒程度ですので、無理なく食べられる量だと思います。
<骨の健康について>
プルーンに含まれる骨の健康に役立つ成分には、ビタミンK、ビタミンB6、β-クリプトキサンチンがあります。ビタミンB6は骨質の改善に効果が期待でき、ビタミンKはプルーン4、5粒程度で成人1日当たりの目安量の約25%を摂取することができます。またβ-クリプトキサンチンは破骨細胞数を減少させ、骨吸収を抑制し、骨形成を促進するため骨密度のみならず骨質や骨代謝を改善してくれます。食物繊維摂取のために1日5粒程度を食べることをおすすめしましたので、その量でビタミンKも一緒に摂取できることになります。
<抗酸化について>
私が注目しているプルーンの成分に、抗酸化に役立つポリフェノール(ネオクロロゲン酸)があります。ポリフェノールは抗酸化力が強く活性酸素など有害な物質を無害化するので、動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立ちます。ポリフェノールの理想的な1日摂取量は1000~1500mgです。ある食事調査から現在の成人女性のポリフェノール摂取量/日は942mgで、490mg不足していることになります。プルーン100gに含まれるポリフェノールは184mgですが、そのうちネオクロロゲン酸という種類が71%で、約130.6mgと高い割合になっています。
閉経後の女性に対するプルーンの抗酸化力の調査では、プルーンを摂取することによって抗酸化力が増加し、酸化ストレスが減少するという結果となりました。
スポーツの現場でも、プルーンの食物繊維によってアスリートの腸活に有用であったり、抗酸化が期待できるなど、注目すべき食材であるといえます。
食生活の中にプルーンを上手にプラスして、骨の健康や抗酸化に役立ててください。
腸と骨を元気にするプルーンメニューの秘密 ~不足しがちな栄養を手軽にプラス~
戸板女子短期大学 特別講師 / NPO法人女性ウェルネス食推進機構 理事長
伊達 友美 先生
プルーンは小さな一粒の中にギュッと栄養素が詰まっています。私は以前からプルーンの力に注目していて、自分でも毎日プルーンを食べて栄養をもらっています。
プルーンの魅力は様々ありますが、まずは食物繊維が豊富なだけでなく水溶性と不溶性がバランスよく含まれていること。多くの食物はどちらかに偏っていることが多いですが、プルーンはちょうど半分ずつというのがすごいところです。ポリフェノールも含まれていることから、水溶性食物繊維+ポリフェノールで腸内の善玉菌を増やしてくれる働きもあります。
ほかにも、ソルビトールは腸を元気にして便をやわらかくしてくれるので便通改善も期待できます。ソルビトールは甘味料としても使われていて、すっきりとした甘さが特徴。食後にプルーンを1つ食べれば口の中がさっぱりするだけでなく、口の中の菌にも作用するので虫歯防止効果も期待できます。また保水効果があるので、調理に使えばバターを少なくすることができたり、料理の保水力も高めてくれます。
では、プルーンを使ったレシピをいくつか紹介しましょう。
腸活には、カリフォルニアプルーンとイチゴを使ったスムージーがおすすめ。朝スムージーを飲めば、プルーンに含まれるマグネシウムや銅を摂取できるので、ミネラルを取り入れることができ、暑い夏などには熱中症予防にも役立ちます。
ほかにも、かぼちゃとあわせて豆乳味噌スープにしたり、鶏団子や根菜と煮込んだ肉料理などでも楽しめます。
骨活にも有用なプルーンですが、腸が元気になることで骨も元気になるので、両方に作用するプルーンはやはり魅力ですね。カリフォルニアプルーンとマッシュルーム、もち麦のリゾットにしたり、白身魚、エリンギと一緒にトマト煮込みにしたり、うま味成分がしっかりあるので主食としても活躍してくれます。
このように、プルーンは甘味料、油脂、卵の代替になってくれる便利な食材です。さらに栄養効果もあるので、調理に使わない手はありません。不足している栄養を補うことができるウェルネスな食・プルーンをもっと広めていきたいですね。
カリフォルニアプルーンを使ったお弁当に舌鼓 参加者へのおみやげも好評
会場参加者には、カリフォルニアプルーンを使ったお弁当が配布されました。女子栄養大学駒込キャンパス内にあるフレンチレストラン「松伯軒」特性のオリジナル弁当で、プルーンのガパオライスやプルーンのかぼちゃサラダ、プルーンのパウンドケーキなど、カリフォルニアプルーン尽くしのおいしいお弁当でした。
また、お土産にはカリフォルニアプルーン協会のオリジナルグッズが配布され、参加者は大満足の様子でした。
《学生向けセミナー》
2025年6月19日(木)相愛大学(大阪市住之江区)管理栄養学科に所属する4年を対象に、カリフォルニアプルーンの栄養や効能を知っていただくことを目的に「腸から骨まで整えるカリフォルニアプルーンの栄養価・機能性を知る“プ活栄養セミナー”」を開催致しました。当日は渡邉泰雄先生、伊達友美先生に加え、調理実習として、相愛大学教授杉山文先生による調理指導を受けました。実習メニューとしては、相愛大学オリジナルレシピ「プルーンとチーズのマフィン」、「プルーンとリンゴのコンポート」、「プルーンのチョコかけ」をそれぞれ調理しました。調理実習した生徒からは簡単に、美味しくできたと好評の感想とそれぞれ楽しみながら、調理実習を終えた様子です。