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食品成分表

【成分表連載37】牛乳などの液状食品を正確に栄養計算するには?

知れば知るほどおもしろい!「食品成分表」渡邊智子栄養学食品成分表

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渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長

 

わたなべともこ東京栄養食糧専門学校校長。医学博士。千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長、産業栄養指導者会会長。文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民協議会委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。

計量カップや計量スプーンの正しい使い方を再確認してみましょう。

3月下旬、女子栄養大学の創設者である香川綾博士をモデルにしたドラマが放送されました。香川博士は料理カードを作成し、計量カップ、計量スプーンを広め家庭における料理の再現性を向上させました。今回は容量ではかるということについて考えてみましょう。

「食品成分表」に載っているのは可食部100gあたりの成分値なので、栄養計算に利用するときには、食品を重さ(質量)で計量し、計算することが基本です。

しかし、日常生活をみると、牛乳、ジュース、ビール、みりん、しょうゆなどの液体食品は,質量(g)ではなく容量(mL)で計量され、レシピに記載されています。レシピに質量でなく容量が記載されている食品は、液状食品のほか、小麦粉、かたくり粉、米、砂糖など、粉状食品や粒状食品です。

これらの食品を用いた献立の栄養計算を行なう4つのコツをご紹介します。

1 「容量」は見た目の大きさ、「質量」は物の重さととらえます

液状食品、粉状食品、粒状食品のように、レシピに示されている量が容量(mL あるいは計量スプーンや計量カップでの表記)のときは、栄養計算ではその容量を質量に変換します。まず、「容量」と「質量」のとらえ方について示します。

 

容量

ある容器に入れられる量、つまり容積のこと。物体が占める空間の大きさをいう。

単位は㎥(立方メートル)やL(リットル)など。料理ではおもに「mL」(ミリリットル)と「L」。

調理では、計量カップ、計量スプーンがその容器に相当し、実験では、フラスコやメスシリンダーがこの容器。

尺貫法での容積の単位

勺(しゃく)、合(ごう)、升(しょう)、斗(と)、石(こく)

1勺18mL、1合=10勺=180mL、1升=10合=1.8039L、1斗=10升=18.039L、1石=10斗=180.39L

    なお、尺貫法とは、日本固有の単位系です。
  • 尺貫法
    長さの単位に「尺」、質量の単位に「貫」を基本にする日本固有の単位系です。
    ほかに、面積の単位〔平方尺、歩(ぶ)、坪など〕、体積(容積)の単位があります。尺貫法は、中国古代制度を起源とするものですが、中国の質量の基本的単位は「斤」で、「貫」は日本特有のものです。「尺」は手を広げて物に当てて長さを計る形の象形文字で、手幅を基準にとった単位です。これらの単位は、計量法施行法により1966年(昭和413月以後は、取引および証明の計量には禁止されています。ただ「匁」だけは、外国で真珠用に用いられているため、真珠に限って認められています。

質量

物体(自分や食品)そのものの量。質量は、食品や自分等、物質に備わっている量。

質量は、スケール(秤)で測定します。食品に使う質量のおもな単位は、「g」「kg」。

厳密な意味ではありませんが、容量は物の見た目の大きさ、質量は物の重さとしてイメージしてみるとわかりやすいと思います。

2 備考欄の「容量と質量の関係」に注目!

質量を容量で割った値を「密度(みつど)」といいます。

大きさの違う物の重さを比較できる値です。

質量と容量が同じ値の水の密度は、1です。

密度が1以上の食品 → 100mLが100g以上の食品

密度が1以下の食品 → 100mLが100g以下の食品

です。

成分表2020(八訂)では、牛乳、嗜好飲料類の液状食品等について、備考欄に「100g:○mL,100mL:○g」の記載があります。

「100mL:○g」の値を使ってレシピの単位の容量(mL)を、栄養計算のために重量(g)に変換することができます。

たとえば、成分表2020(八訂)の普通牛乳の「備考欄」を見ると…

普通牛乳の「備考欄」

「100g:96.9mL,100mL:103.2g」とあります。

献立に、「普通牛乳200mL」と記載してあれば、質量は下記のように計算し、栄養計算には計算結果の値(206.4g)を使います。

200 mL × 103.2 g ÷ 100 mL = 206.4 g

5mL15mLおよび100mL重量表」も活用しましょう

日本食品標準成分表2015年版(七訂)追補2018の第5部には以下の資料が収載されていました。

「5mL,15mL及び100mL成分表(本表)」

「5 mL成分表,15 mL成分表及び100 mL成分表(脂肪酸成分表 第1表)」

「5 mL成分表,15 mL成分表及び100 mL成分表(炭水化物成分表)」

「5 mL成分表,15 mL成分表及び100 mL成分表(別表2 有機酸成分表)」

 

 

そのため、成分表2015(七訂)では、

100mL成分表を見れば、主要な粉状および液状食品100mLの質量を一覧で見ることができました〔備考欄の記載(100mL:○g)を見なくても事足りました〕。

女子栄養大学出版部の『八訂食品成分表2023』の本表編には、「『日本食品標準成分表』資料」として、これらの成分表から重量を抽出した「5mL重量表,15mL重量表および100mL重量表」を収載しています。

100mL重量表は、成分表2020(八訂)の備考欄の「100mL:○g」の部分を一覧で見ることができるので、栄養計算のための容量を質量に変換する場合には、この表を利用すると便利です(作業時間が短縮できます)。

また、料理のレシピの分量が計量スプーンで記載されている場合は、小さじ(5mL)、大さじ(15mL)の重量表の値を、計量カップ(200mL)での記載であれば、100mL の重量表の値の2倍量を、それぞれ栄養計算に使いましょう。

この方法で栄養計算を行なうと、粉状食品、液状食品、粒状食品の栄養計算は、今まで以上に摂取量に近い値が算出できます。

4 正確な栄養計算は正確な計量から

1948年ころ、女子栄養大学の創立者である香川綾先生が広めた計量スプーン、計量カップは、料理作りに欠かせない計量器具になり、多様な製品が流通しています。

これらは、計量法による製品ではないため、正確な検定を必要としていません。そのため、製品により実際に計量できる量に相違があります。

いつも使っている計量スプーンと計量カップに水を入れ、その質量をスケールで測定してみましょう。測定した水の質量の値が、「大さじ:15g」、「小さじ:5g」、「1カップ:200g」であれば、それらの調理器具は、正確な値の計量スプーンやカップです。

もし、これらの値よりも少ない値であれば、その計量器具は表示された容量よりも実際は少ない容量であるため、食品をその器具で計る場合は、多めに計る必要があります。また、表示の値よりも大きい値であれば、その調理器具は表示よりも大きい容量なので、その器具で計量する場合は、少なめに計る必要があります。

計量スプーンは、多様な素材(ステンレス製,プラスチック製,木製など)、多彩なデザインの製品があります。使い勝手のよい製品を選択して使いましょう。たとえば、素材がやわらかすぎる計量スプーンは、食品を計ることに不安定です。また、計量スプーンの高さが低い製品は、液状食品の1/2量の計量が困難です。

なお、計量スプーンで、液状食品の1/2を計る時には深さの2/3まで食品を入れるのが妥当です。スプーンは半円形なので、高さの半分量はスプーン全体の半分量ではないからです。

1/2の場合は、スプーンの形状上、2/3の高さまで液体をいれましょう。(『七訂食品成分表2020』女子栄養大学出版部刊 から)

 

以下に『八訂食品成分表2023』(女子栄養大学出版部)資料編の105ページから、計量カップ・スプーンの正しい使い方を示したページをご紹介します。

栄養計算をていねいに行なうことと、食品をきちんと計量して料理することは、栄養計算結果を正確にするための両輪です。計量カップや計量スプーンの正しい使い方を再確認してみましょう。

家庭用に数値を丸めた重量表

冒頭でご紹介した香川綾博士は、計量カップ、計量スプーンを広め家庭における料理の再現性を向上させました。

給食業務では、液状食品以外は原則として食品質量はスケール(秤)により計量されます。一方、家庭では、計量カップ、計量スプーンで容量を計量する場合が多くみられます。そこで、主要な食品について、質量を容量に変換した表を用意しておくと便利です。

家庭で使いやすいように数値を丸めたものが女子栄養大学出版部の成分表の本表編の裏表紙に載っています。また、文科省で公表の、より精度の高い表も、女子栄養大学出版部の本表編には載っています(本表編p352-357)。

違いに留意して目的に応じて活用するとよいでしょう。


八訂 食品成分表2023

栄養計算ソフトほか全部で3つの電子版付録がついています
香川明夫/監修

私たちが日ごろ食べている食品にはどんな栄養素がどのくらい含まれているのでしょうか? 「食品成分表」はそのデータ集であり、女子栄養大学出版部では食と健康に関する最新資料とともに「本表編」と「資料編」の2分冊にとりまとめて毎年出版しています。

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