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食品成分表

【成分表連載40】「し好飲料」の見方 水 編

知れば知るほどおもしろい!「食品成分表」渡邊智子栄養学食品成分表

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渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長

 

わたなべともこ東京栄養食糧専門学校校長。医学博士。千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長、産業栄養指導者会会長。文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民協議会委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。

30℃を超える日も続き、水分補給の大切さがいわれる季節です。飲料は水が基本です。おいしい水を飲むと元気になりますよね。おいしい水のことを甘露水ともいいます。一方、し好飲料を飲むかたも多いのではないでしょうか。今ではだれでも気軽に飲めるようになりましたが、お茶もコーヒーも、古来は薬として飲用されていた貴重な食品でした。

「食品成分表」の「し好飲料類」について、3回にわたってご紹介していきたいと思いますが、今回は、「し好飲料」とはなにかということ、そして「水」についてご紹介します。

「し好飲料」は個人のし好を満足させる飲料

し好(嗜好)飲料の「嗜(たしな)む」には、「好んで親しむ」「愛好する」などの意味があります。「し好(嗜好)」は、「たしなみ、好むこと」「趣味」「飲食物についての好み」などを意味しています。つまり、し好飲料は個人のし好を満足させる飲料です。広義のし好飲料はアルコール飲料を含み、狭義のし好飲料はアルコール飲料を含まず、清涼飲料(清涼飲料水)あるいはソフトドリンクともいわれます。

清涼飲料水はさまざまな食品群に分類

清涼飲料は法令では「乳酸菌飲料、乳及び乳製品を除く酒精分1容量パーセント未満を含有する飲料」と定義され、飲むときに希釈や融解などにより飲み物にする食品も含まれています。ただし、粉末清涼飲料は除きます。なお、酒精分とはアルコール分のことで、アルコール1%未満の飲料は清涼飲料として販売されています。

清涼飲料にはミネラルウォーター、炭酸飲料、豆乳、野菜ジュース、果実ジュース、濃縮ジュース、凍結ジュースなどがあり、かならずしも成分表の「し好飲料類」に収載されているわけではありません。豆乳は豆類に、野菜ジュースは野菜類に、果実ジュースは果実類に収載されています。

 

し好飲料の摂取量は東海で多め!?

し好飲料類の摂取量には個人差があります。たとえば、表1の令和元年国民健康・栄養調査報告から抜粋・計算したデータ(全国平均値、最大値、最小値)を見ると、し好飲料類の地域による摂取量の相違がわかります。さらに最大値が最小値の何倍であるかを計算すると、1.3~3.6倍であることがわかります。

表1 し好飲料の摂取量(g)

近畿Ⅰは京都・大阪・兵庫、近畿Ⅱは奈良・和歌山・滋賀、関東Ⅱは茨木・栃木・群馬・山梨・長野を指す。令和元年国民健康・栄養調査報告より

 

 

 

 

なにを選ぶかによって摂取成分も異なる

私たちが清涼飲料水を飲むとき、飲料の色や香り、味(甘さや酸味)、栄養素の種類や量、飲む場面、そのときの気分など多様な要素を反映して選んでいます。

たとえば甘い飲料を選ぶと、甘さの原料になっている食品(砂糖など)に由来するエネルギーがあり、思わぬエネルギー摂取につながる場合があります。一方で、果実や野菜を原料とする飲料では、それらに由来する栄養成分を摂取することもできます。

し好飲料の質量と容量の関係

し好飲料類の商品は、1包装(1単位)約200mL~2Lと幅があり、また、摂取量の個人差も大きいことが知られています。

食品成分表の収載値は100gあたりに含まれる質量(g)ですが、飲料のような液状食品は、日常では容量(mL)で摂取量を計ります。100gの水は100mLですが、質量と容量が同じでない飲料が多くみられます(表2に事例を記載しました)。

表2 液状食品の質量と容量

「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の備考欄から抜粋

質量と容量の相違は数%にすぎませんが、表2に示した飲料は、容量を計量して飲んだ場合は容量以上の質量を摂取していることがわかります。

通常、1回に飲む飲料の量は100mL以上であり、また1日に何回か摂取するので、厳密な栄養計算では容量を質量に変換することが必要です(健康な人の日常では便宜的に容量の数値のまま計算してもよいと思います)。

飲料の摂取量は1日で見ると大量なので、摂取している飲料に含まれる栄養素は思っている以上に1日の摂取量に寄与している場合があると覚えておきましょう。

 

基本の飲料 水(水道水) カルシウム量には無視できない違いも

水については本連載第31回でもご紹介していますが、微量に無機質が含まれています。成分表2020(八訂)では、水道水の無機質(ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、セレン)を資料で示していますが、カルシウム以外は栄養計算で無視できる程度の含有量です。

そこで、水道水のカルシウム量について、全国と地方区分別(北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄)の中央値と最大値を表3に記載しました。

表3 水道水の地域別のカルシウム量  (mg/100g)

硬度から計算した推計値

カルシウムの中央値を見ると日本の水が軟水であることがわかりますが、最大値を見ると市販のエビアン(8mg/100g)に近い量のカルシウムを含む水道水もあることがわかります。

常用する水道水のカルシウム量は、水を提供している浄水場で硬度のデータを入手すれば計算できるので、ぜひ調べてみませんか。興味深い結果が得られるかもしれません。

なお、浄水場から入手した硬度からカルシウム量を計算する方法も、本連載第31回に記載しています。

おいしい水が私たちの飲料の基本です。日本では、水道法(※)よりおいしい水が提供されています。

  • ※水道法

    1957年(昭和32年)に施行された法律で、目的や責務、水質や施設に関する基準、水道事業に関する基準など、国内に水道を普及させるためのさまざまな取り決めがされています。

    水道法の目的は、「水道の布設及び管理を適正かつ合理的ならしめるとともに、水道の基盤を強化することによって、清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与する」です。言い換えると「安全・安心な水を豊富に低価格で供給するため、水道施設の整備及び適正管理など基盤を強化して、国民の生活をより良くする」ことです。安全・安心でおいしい水を、日本ではすべての人が安価で利用できますが、それはこの法律により水道水が守られているからといえるでしょう。

市販品の水は表示の成分値を使って計算しましょう

また、飲用水を購入する場合には、カルシウムの含有量を比較して購入することも一案です。ミネラルウォーター(微量な無機質を含む水)など市販品の水が多数販売されていて、清涼飲料水統計2022を見ると、ミネラルウォーター類は全商品数が256もあります。

栄養計算ではこれらの水に含まれるカルシウム量は、表示があればその値を使いましょう。表示がない場合は、その水を生産した地域が記載されていればその地域の水道水のカルシウム量を、生産した地域が不明であれば全国平均のカルシウム量を使いましょう。

 



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香川明夫/監修

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