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食品成分表

【成分表連載48】「ナトリウム」と「塩分」と「食塩相当量」と、食品成分表の調味料の「食塩類」のお話

知れば知るほどおもしろい!「食品成分表」渡邊智子栄養学食品成分表

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渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長

 

わたなべともこ東京栄養食糧専門学校校長。医学博士。千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長、産業栄養指導者会会長。文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民協議会委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。『八訂食品成分表2024』本表監修(女子栄養大学出版部)。著書に『これだけは知っておきたい!「食品成分表」と「栄養計算」のきほん』(講談社)ほか。

 

日本人のナトリウム摂取量は、塩やしょうゆ、みそなどの調味料によるところが非常に大きく、かなりをそれらに依存しています。調味料売り場を改めて見てみると、これらの食品にはそれぞれナトリウムの少ない減塩タイプの製品があり、売り場面積が広がっていることに気がつきます。特に、調味料の食塩の減塩製品が登場した時には、驚きました。

減塩タイプの塩、しょうゆ、みそは、これまでと同じ量を料理に使うと、料理の味はほぼそのままに、ナトリウム摂取量を減らせるとして重宝されています。そのため、ナトリウムの制限があるかただけでなく、料理から摂取するナトリウムの過剰摂取を防ごうと考えるかたがたにも、おいしく減塩できる方法の1つとして利用されています。「成分表2020(八訂)」の「食塩類」「しょうゆ類」「みそ類」にも減塩製品が収載されています。ここでは、食塩について見てみましょう。

まずは、食品成分表の「食塩相当量」と「ナトリウム」について確認しましょう。

1)食塩相当量とナトリウム量の関係

「食塩相当量」は、ナトリウム量に「2.54」を乗じて算出した値です。「2.54」は、食塩(NaCl)を構成するナトリウム(Na)のモル質量(22.989770)と塩素(Cl)のモル質量(35.453)から算出したものです。

NaClの式量/Naの原子量

=(22.989770 + 35.453)/22.989770
≒ 2.54

栄養計算に使うのは「ナトリウム」か「食塩相当量」か

食塩相当量をお勧めする理由は、食品成分表の数値の表示方法にあります。次の表1をご覧ください。

表1 ナトリウムと食塩相当量の数値の表示方法

たとえば、食塩(食品番号:17012)を例に見てみますと……

ナトリウム量(mg)39000 とあれば
分析値は、38500~39499 の間にあることを示しています。これを食塩相当量に換算すると 97.79~100.32746 です。
最大値は最小値の1.0259倍です。

一方で、食塩相当量(g) 99.5 とあれば
分析値は、99.45~99.54 の間にあることを示しています。
最大値は最小値の1.0009倍です。
すなわち、次のことがいえます。

食塩相当量はナトリウム量よりも、分析値とのズレは小さい

3)「塩分」と「食塩相当量」は違う

ところで、食塩相当量とは、ナトリウムを食塩に換算した場合の量のことです。すなわち、いわゆる塩けの「塩分」とイコールではありません。

食品のナトリウム量は、食塩に由来するナトリウムだけでなく、原材料となる生物に含まれるナトリウムイオン、グルタミン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等に由来するナトリウムも含まれているのです。

そのため、塩分という表現は厳密には不正確で、栄養管理には「食塩相当量」という言葉を用います。

 

4)「成分表2020(八訂)」における調味料の「食塩類」

大切にされてきた日本の塩

塩は、私たちの命をつなぐ大事な食品の1つです。日本では、1905年(明治38年)に塩専売制度が創設され、塩の需給と価格の安定に寄与してきました。

1949(昭和24)年に塩・たばこ・樟脳の専売事業を執り行う日本専売公社が設立され、1985(昭和60)年には民営化され日本たばこ産業株式会社に移行しました。さらに、塩事業法が1997(平成9)年4月1日から施行されることを踏まえ、 1996(平成8)年7月1日に日本たばこ産業株式会社の塩専売事業本部から独立・事業継承し、「財団法人塩事業センター」が設立されました。現在は、塩は、塩事業法により自由に各社が販売しています。

食品成分表の食塩類の種類とそれぞれの特徴

食品成分表には、調味料の「食塩類」が6食品載っています。「食塩」、「並塩」、「減塩タイプ食塩 調味料(無機塩、有機酸)を含む」、「減塩タイプ食塩 調味料不使用」、「精製塩 家庭用」、「精製塩 業務用」です。

「食塩」と「並塩」の塩化ナトリウム含有量は、塩事業センター及び日本塩工業会等の品質規格で定められています。「食塩」塩化ナトリウム含有量が99 %以上「並塩」塩化ナトリウム含有量が95 %以上のものです。「並塩」は、「あら塩」として市販されています。

「減塩タイプ食塩 調味料含む」は、塩化ナトリウムが50%以上カットされている減塩された食塩です。食用塩公正取引協議会では、塩化ナトリウム以外の塩類が50%以上含まれている場合に限り、「減塩」の表示ができることとしています。「減塩タイプ食塩 調味料を含む」は、塩化ナトリウムの代替として、塩化カリウム、炭酸マグネシウムによる減塩を行ない、さらにグルコン酸ナトリウム等の調味料(無機塩等)を添加したものです。

「減塩タイプ食塩 調味料不使用」は、グルコン酸ナトリウム等の調味料を含みません。減塩のために塩化カリウムを主として用いるためカリウム量が多くなるので、カリウム制限がある場合には注意が必要です。

「精製塩」は塩事業センターの品質規格で塩化ナトリウム含有量が99.5 %以上と定められています。「家庭用」は、固まることを防止するために炭酸マグネシウムを添加した製品です。炭酸マグネシウム無添加のものは「業務用」として流通しています。

表2 食塩類の食塩相当量とカリウム量(100gあたり)

塩味は料理の味つけの基本です。食塩売り場を改めて意識してみてご覧ください。そして表示をご確認ください。多彩な塩の中からいつもの料理にいつもと違う塩を使ってみると、いつもと違うおいしさを感じる場合があります。試してみませんか。



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香川明夫/監修

私たちが日ごろ食べている食品にはどんな栄養素がどのくらい含まれているのでしょうか? 「食品成分表」はそのデータ集であり、女子栄養大学出版部では食と健康に関する最新資料とともに「本表編」と「資料編」の2分冊にとりまとめて毎年出版しています。

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