胃を切ったあとの体調不良⋯気をつけて! それは年齢のせいでも 気持ちの問題でもない!(前編)
じつは、前編であげた胃切除の後遺症の症状は、ほんの一例です。なぜなら、症状は人によってさまざまで、後遺症が起こる時期も、手術後すぐだったり、5年10年と年数がたってからだったりとそれぞれだからです。
もちろん、体調が悪いときは別の病気が隠れていることもあるので、かならず医師の診断を受けてください。それでも原因がわからない場合は、胃切除の後遺症を疑ってみてください。
がんが治った喜びで、見落としがちなこと
胃を失った後遺症の原因の一つに、食べたものが一気に腸に落下することがあります。これは血糖値の急激な上昇の原因にもなります。また、栄養素の消化や吸収が悪くなって栄養不足になることも、さまざまなトラブルの原因に。食欲が湧かなくなるのは、胃壁からのホルモンの分泌がなくなるためです。
病院を退院するとき、主治医の先生から、胃切除後に起こりうるこれらのトラブルについての説明と対処法を受けたかたもいるかもしれません。ただ、その症状は前述のように多様なので、より綿密な食事指導や情報の提供が必要になります。
しかし、患者さんも医療者も、がんが治った満足感から、多少の体調不良に気づかなかったり、がまんするべき副次的症状と思いがちだったりするといいます。
『胃がん手術後の安心ごはん』では、後遺症を引き起こす原因と対策、食生活上の改善点、後遺症を防ぐポイントを、それぞれの症状ごとにわかりやすく解説します。消化酵素薬や経腸栄養剤など、処方が必要なものの情報もあります。
また、胃を切除したかたにおすすめしたい、消化吸収の負担の軽減を考えた料理や献立を多数収載。胃を切った人の情報紙「アルファ・クラブ」に寄せられた患者さんの体験談をベースに、体重を戻したい、体力を回復させたい、おいしそうだという感覚をとり戻したいといった悩みにもこたえるレシピが充実しています。管理栄養士の金原桜子先生が、作りやすさも考慮のうえ、120品以上のレシピをご紹介しています。
体からのサインを見逃さずに
医療技術の進歩で、胃がんの手術の苦しみは激減。入院期間も短くなったことで、逆に大病感や重病感がうすれてしまったと青木先生はいいます。それでも胃を失ったことは、その後の消化吸収という仕事のうえでは、不都合なこと、できないことが出てきます。
体の不調はそれを知らせてくれる重要なサイン。小さなサインも見逃さず、がまんしないで、ご自身の体をいたわってほしいと思います。
料理/金原桜子
料理写真/田邊美樹
イラスト/フクイサチヨ
書籍紹介
この記事は、『食事療養はじめの一歩シリーズ 胃を失ったあとの後遺症を防ぐ! 胃がん手術後の安心ごはん』をもとに作成しました。
食事療法はじめの一歩シリーズ
胃を失ったあとの後遺症を防ぐ!
『胃がん手術後の安心ごはん』
青木照明・金原桜子/著
B5判変型/128㌻/本体1600円(税別)