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アスリートの体づくり、パフォーマンスの向上に朝食は欠かせないことを知ってほしい Part1

スポーツ栄養学アスリート新刊

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日本水泳のトップ選手の指導者・奥野景介早稲田大学水泳部監督とスポーツ栄養の第一人者・田口素子早稲田大学スポーツ栄養研究所所長が、学生アスリートの「食」を語り合います。

田口素子 早稲田大学スポーツ栄養研究所所長/早稲田大学スポーツ科学学術院教授

奥野景介 早稲田大学水泳部監督/早稲田大学スポーツ科学学術院教授

撮影/青山紀子

田口 奥野先生はオリンピアンですが、現役時代からスポーツ栄養はとり入れていたのでしょうか?

奥野 オリンピック競技チームに初めて栄養士が帯同したのがバルセロナ大会(1992年)ですよね。私はロサンゼルス大会(1984年)ですから、当時、スポーツ栄養に関する情報は、アスリートにはなかなか届きませんでした。

田口 では、どんな食事を?

奥野 水泳部寮の朝食は毎日同じで、1人分卵1個とお新香2切れ、あとは納豆、ごはん、みそ汁、ふりかけは食べ放題。大きなボールに山盛りになった納豆を、銘々がお玉ですくってモリモリ食べていましたね。
昼食は、キャンパス周辺の盛りのいい飲食店で。ごはんとみそ汁が食べ放題の店は、運動部の学生が席の争奪戦をしていました(笑)。
知識はありませんでしたが、量的にはしっかり食べていましたし、ジャンクフードやファストフードは食べませんでした。ただ、野菜は少なかったかな。

田口 なかなかすごい食生活ですが(笑)、朝食でたんぱく質はそれなりにとれていますね。

奥野 はい。しかし、現在はスポーツ科学を練習に取り入れるのが当たり前になっています。
私は指導する立場になってからは、スポーツ栄養は勝つための作戦として不可欠と考えてきましたし、アスリートの食事の問題は解決しなければならない課題でした。
ですから、田口先生が大学に着任された時、真っ先に研究室を訪ねて栄養サポートをお願いしたのです。

田口 大学生アスリートであっても、中学校、高校で食事の大切さを教わらずにきた学生はたくさんいますね。相談でいちばん多いのは、男子選手では体を大きくしたい、筋肉をつけたいという体づくり、女子選手は減量です。
女子選手は、やせたいとなると、運動量は多いのに食べなくなってしまう傾向がありますから、「食べないとやせないよ。これくらい食べても太らないし、かえって体が動くようになって体脂肪が減りやすくなるよ」とアドバイスします。
「とにかく信じてやってごらん」と送り出すと、数週間後に「本当でした!」と報告に来てくれますね。

奥野 オリンピック代表クラスの選手のひとりが、今シーズン不調が続けば引退というせっぱ詰まった状況で、田口先生のサポートチームに実践的な栄養サポートをしていただき、調子が戻って復活したときは本当にありがたかったです。
私も栄養サポ-トの成果が成績にあらわれることを痛感しましたし、スポーツ栄養をとり入れて調子を上げる選手を見ることは、周りの選手の教育にもなると思います。

田口 スポーツ栄養は知識を教えることも大事ですが、食べないと体は変わりません。
学生アスリートからかならず聞かれるのは「何を食べたらいいの?」ということです。それにこたえるためにも、具体的なレシピを提示していかなければいけないと思います。
選手自身はもちろんですが、マネージャーや選手のご家族でも無理なく作れて、科学的な裏づけのあるレシピです。
実践すれば体が変わってくることを実感できるはずです。
朝ごはんを食べる――まずは、その一歩から始めてほしいと願っています。

田口 長年、スポーツ栄養の現場に携わっていますが、この数年、なんとかしなければと思うのが高校生、大学生といった学生アスリートの食生活です。
なかでも、朝食を食べない子が増えているのが問題です。運動部に所属する大学生を対象にしたアンケートでも、多くは朝食を欠食しているという結果でした。
これは体をつくり、パフォーマンスの向上を目指すためには見逃せないことです。早稲田大学水泳部を率いるお立場でいかがでしょう?

奥野 最近の若い選手には、細マッチョが格好いいという風潮が少なからずあると思います。
「強そうに見えないで、じつは強い」というものへの憧れなのでしょうか。
水泳部の監督としては、上半身は細マッチョでは困るのですが。

田口 競技によって理想の体型は異なりますが、全体に体の線が細い選手が増えた印象はあります。部活動をしていれば、運動量が多くておなかがすくはずなのですが、なぜ朝食を食べないとお考えになりますか?

奥野 学生選手にありがちですが、彼らの感覚として、食事は計画的にとるものではなく、空腹になったら食べるものなのかもしれません。
大学の部活動は朝練がある部は少なく、午後の練習が部活動の中心となります。
ですから、朝食を食べなくても午前中はなんとかなってしまう。昼になるとおなかもすくし、夕方からの練習に備えて、昼食や間食を食べておく。練習後は、おなかがすくので夕食はしっかり食べる。
このような食習慣が日常化しているのではないでしょうか。

田口 ただ、それでは1日に必要なエネルギー、栄養素は補えないのです。
これは私たちの研究所の調査結果からみても明らかです。
朝食の重要性を訴えたいのはそのためです。

……ということで、その具体的なレシピを紹介するのが、『アスリートのための朝食術』です。上の対談は本書の対談ページを一部抜粋したものです。次回は、なぜ「朝食」なのか? について続けます。

書籍紹介

科学的な裏付けのあるレシピをたくさん紹介しています。
実践すれば体が変わることを実感できるはずです。

一人暮らしでも、朝練の日でも、遠征の日でも
これなら続けられる
『アスリートのための朝食術』
田口素子/監修
早稲田大学スポーツ栄養研究所・エームサービス株式会社/著
B5判/120㌻/本体1400円(税別)

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