食品成分表
連載【17】 「七訂までの計算方法によるエネルギー値を使いたい場合」や「エネルギー産生栄養素バランスの計算」についてお困りの皆さんへ
渡邊智子
学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長
前回は成分表2020年版(八訂)の新しい計算方法によるエネルギー値を活用する栄養価計算について紹介しましたが、成分表2015年版(七訂)の方法でエネルギーを計算したい場合もあると思います。そこで、それを考えてみましょう!
これまでの栄養価計算結果と比較したいというような、これまでとの継続性から、これまでのエネルギーの計算方法の値を使いたい場合があるかもしれません。
その場合は、文部科学省版の成分表の資料3に記載されている参考表に示されている成分表2015年版(七訂)の方法によるエネルギー値を使います。表1に、参考表の1部を抜粋して示しました。赤枠が、計算に使う成分表2015の方法で計算したエネルギー値です。
表1 食品成分表2020年版と2015年版の計算方法によるエネルギー値の比較及び2015年版で適用したエネルギー換算係数 :成分表2020年版(八訂)の表を一部抜粋
2015の方法で計算したエネルギー値の算出に用いた成分は、表2に示したように、たんぱく質群のたんぱく質、脂質群の脂質、炭水化物群の炭水化物(利用可能炭水化物、食物繊維、糖アルコールも含まれています)、有機酸、アルコールです(★で示しました。2020の方法とは異なる成分ですね!)
表2 成分表2020の表頭(エネルギーに関する成分)
「成分表2020年版(八訂)のエネルギー量とそれを計算した成分」&「成分表2015年版(七訂)の計算方法によるエネルギー量とそれを計算した成分」の両方を計算したい場合について2つのエネルギー値とそれぞれを計算した成分の摂取量を計算するための表を表3に示しました。
表3 成分表2020年版(八訂)を使って「新しい計算方法のエネルギー値での栄養価計算」も「成分表2015年版の方法のエネルギー値での栄養計算」も行いたい場合の表頭(成分項目)
赤字は2020年版(八訂)の新しいエネルギー値の算出のみに使う成分、青字は2015年版(七訂)の方法で計算したエネルギー値の算出のみに使う成分です。緑文字は、2つの方法ともに共通してエネルギー値の計算に用いる成分値です。黒文字は、共通して栄養価計算に使う成分です
なお、アミノ酸組成によるたんぱく質、脂肪酸組成によるトリアシルグリセロール当量、利用可能炭水化物(質量計)には、第16回で記載した方法ですべての食品に値を入れておきます(とても重要です)。
この表があれば、「成分表2020年版(八訂)のエネルギー量とそれを計算した成分」の摂取量と「成分表2015年版(七訂)の計算方法によるエネルギー量とそれを計算した成分」の摂取量の、両方の計算ができます。
この2つの方法の計算を望むユーザーもいるので、この表の表頭と成分内容の成分表と栄養価計算ソフトの開発も、各出版社に期待しています。(編集部注:5月下旬に公開予定の女子栄養大学出版部の付録の栄養計算ソフトでは、ご期待に沿う形になっております。すなわち、八訂でのエネルギー計算方法でも、七訂でのエネルギー計算方法でも対応できるソフトとなります。)
成分表2020年版(八訂)の新しいエネルギーだけに特化した栄養価計算を行なう場合は、第16回の表頭の成分表を利用し、2つのエネルギー値の計算を行ないたいあるいは場合によって選択したい場合には、今回ご紹介の表頭(表3)を利用しましょう。
2つのエネルギー計算方法で行うエネルギー産生栄養素バランスの計算
成分表2020年版(八訂)の新しいエネルギー値を使った場合のエネルギー産生栄養素バランスは、下記のように計算しましょう。
1. たんぱく質エネルギー比率(%)
=アミノ酸組成によるたんぱく質量(g)× 4(kcal)÷エネルギー量(kcal)× 100
2. 脂質エネルギー比率(%)
=脂肪酸のトリアシルグルセロール当量の質量(g)× 9(kcal)÷エネルギー量(kcal)×100
3. 炭水化物エネルギー比率(%)
=100(%)- (たんぱく質エネルギー比率(%)+ 脂質エネルギー比率(%))
★炭水化物エネルギー比率の計算を、成分表2020年版(八訂)の利用可能炭水化物と食物繊維総量を使って計算することも可能です。そのことは、別の機会に説明します。
成分表2015年版(七訂)の計算方法のエネルギーを使った場合のエネルギー産生栄養素バランスは、下記のように計算しましょう。
1. たんぱく質エネルギー比率(%)
=たんぱく質量(g)×4(kcal)÷エネルギー量(kcal)× 100
2. 脂質エネルギー比率(%)
=脂質量(g)×9(kcal)÷エネルギー量(kcal)× 100
3. 炭水化物エネルギー比率(%)
=100(%)- (たんぱく質エネルギー比率(%)+脂質エネルギー比率(%))
なお、エネルギー産生栄養素バランスの計算も、栄養価計算ソフトに組み込んでいただくとユーザーとしては大変助かります。(編集部注:今秋発売予定の女子栄養大学出版部の栄養計算ソフト<栄養Pro>では反映見込みです。)
このように、現時点で、文部科学省の成分表2020年版(八訂)を使って栄養価計算を行なうのは、注意深く成分表の項目を確認し収載値を選択する必要があります。そのため時間がかかり、間違いが起きやすい状況です。そこで、民間の会社には、ここで記載した内容で成分表を編集し、栄養価計算ソフトの開発を行なってくださいますよう願っています。
その成分表や栄養価計算ソフトの普及により、成分表2020年版(八訂)の活用が可能になると思います。
一般ユーザー、栄養士、管理栄養士養成校での成分表2020年版(八訂)の取り扱い
成分表2020年版(八訂)は、最新の食品成分データベースです。一般ユーザーは、最新版をぜひご利用ください。
また、栄養士・管理栄養士養成施設では、成分表2020年版(八訂)を使って教育することをおすすめします。新しい成分表の最新の情報は、重要です。
栄養価計算では、エネルギーは新しいエネルギー値を、たんぱく質群はたんぱく質、脂質群は脂質、炭水化物群は炭水化物を、便宜上、使いましょう。
来年度には、各出版社がここで記載したような成分表を発売してくださると思いますので、来年度からは、上述した成分表2020のエネルギーを計算した成分を使って栄養価計算をしましょう。
<お知らせ>
5月23日(日)10時~11時40分
渡邊智子さんを講師にお迎えしてオンラインセミナーを開催します。
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