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食品成分表

【成分表連載36】「廃棄率」を極めて「無駄のない購入」と「栄養計算の精度アップ」を実現!

知れば知るほどおもしろい!「食品成分表」渡邊智子栄養学食品成分表

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渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長

 

わたなべともこ東京栄養食糧専門学校校長。医学博士。千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長、産業栄養指導者会会長。文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民協議会委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。

新学期。さあ、成分表2020(八訂)を本格的に使っていきましょう!

成分表2020(八訂)が公表された翌年の2021年に、栄養士・管理栄養士養成校では、成分表2020(八訂)を使った授業が開始されました。この教育を受けた学生さんは、2年制の養成校であれば2023年3月に卒業しました。そのため、この4月から成分表2020(八訂)で授業を受けた学生さんが、栄養士としてさまざまな現場で勤務を開始しました。

改訂により、献立が変わらなければ実際のエネルギー量そのものは変わらないこと、すなわち値が減ったからといってその分を補う必要はないことへの理解が、給食関係者の間で進んできたのではないでしょうか。

八訂の導入がまだのかたも、成分表2020(八訂)での栄養計算にとりくみましょう。少し間があきましたが、前回は、食品成分表を横(栄養成分等)と縦(食品分類)とに分け、横の内容として11のポイントをあげ、そのうちの一部について説明しました。今回は、その11ポイントのうちの7)のテーマでもある、廃棄率と、それに関する事項を説明します。

1 成分表の「廃棄率」の丸め方は意外とざっくりしている

廃棄率は、「食品の捨てる部分」の「食品全体」に対する割合を「%」で示した値です。一方、「食品の食べられる部分」(可食部)の食品全体に対する割合を「可食率」といいます。廃棄率は以下の式で計算します。

廃棄率の計算式

廃棄率(%)=捨てる部分の質量(g)÷食品全体の質量(g)×100

成分表2020(八訂)の廃棄率は、10%未満は整数、10%以上は5の倍数に丸めて示されています。つまり、10%以上の廃棄率は、おおよその値です。

たとえば、廃棄率「15%」の食品の廃棄率は,13~17%までのどれかの値であることを意味します。

廃棄率15% の値を使って食品を購入した場合に起こること

実際の廃棄率が13%〜15%未満 → 食品の可食部の量は多くなり、食品が余る

実際の廃棄率が15%越え17% → 食品の可食部の量は少なくなり、食品が不足する

このようになりますよね。

2 同じ素材でも、廃棄率はじつは変動する

成分表2020(八訂)の収載食品の廃棄部位は、各食品の備考欄に記載してあります。廃棄率が変動する要因を「りんご」を例に見てみましょう。

廃棄率が変動する要因

例「りんご」

1.  廃棄する部位の相違(皮、芯の周辺はどのくらい捨てるかで異なる

2.  りんごの大きさの大小(大きいりんごは小さいりんごよりも捨てる割合が少ない:廃棄率は小さい)

3.  調理器具(ピーラーと包丁はどちらも技術力により廃棄率が異なる)

4.  調理技術(皮むきの上手な人の廃棄率は小さい)

このように廃棄率は条件や方法、技術などによって変わってきます。

で詳述しますが、ご家庭や給食施設で常用する食品の廃棄部位を調べ、実際の廃棄部位と比較してみましょう。相違があれば、その値があなたのための廃棄率です。成分表の廃棄率の値ではなく、その値を用いて計算しましょう。

 

3 廃棄部位? 可食部位? 魚の皮もにんじんの皮も要確認

魚や野菜の皮は、廃棄前提の成分値となっているでしょうか? 食べること(可食)前提の成分値となっているでしょうか? 改訂の歴史で変化が見られます。

四訂日本食品標準成分表(以下、四訂成分表)では、魚の皮は、原則として可食部としていました。すなわち、魚の「生」の収載値には皮の成分量が含まれていることになり、「刺し身」の成分値としては最適とはいえませんでした。にんじん、大根、かぶの皮についても、可食部としていましたが、実際には、皮を廃棄して食べる場合も散見されていました。

そこで、五訂日本食品標準成分表(以下、五訂成分表)を策定するさいに、魚の皮と前述した野菜の皮を、可食部とするかどうかについて検討がなされました。

これらの皮は、摂取可能な部位なので食品学的には可食部です。しかし、これらの皮を廃棄するかどうかは、食習慣(食文化、嗜好などを反映)、給食施設や個人等の判断に由来します。

そこで、その判断に基づき選べるように、五訂成分表以降は、主要なについて「皮なし 生」(「刺し身」の成分値として利用できます)が順次、収載されてきています。一方、にんじん、大根、かぶは、五訂成分表で「皮つき」と「皮なし」が収載され、今も踏襲されています。

五訂成分表策定時に、水産試験場の研究者である魚担当委員の先生から「魚の皮は可食部です。栄養士さんや管理栄養士さんには、魚の皮を食べるように指導してほしいです」とのお言葉をいただきました。SDGsとしても、魚の皮を食べることはおすすめできます。

4 常用する食品の廃棄率を調べておくと計算の精度がアップ

家庭や給食現場では、常用する食品(頻出する食品:りんご、玉ねぎ、にんじん、じゃが芋、ブロッコリーなど)について、廃棄率調査を実施しましょう。スケールがあれば実施できます。

たとえば、にんじんの全農の出荷規格では、3Lは300~400g、Mは120~170gです。通常、野菜は大きいサイズのものは小さいサイズのものよりも廃棄率が小さくなります。そのため、常用する食品の廃棄率を調べることは、食品の購入量の算出に役立ちます。

家庭や給食施設独自の廃棄率表を作り、成分表に記載の廃棄率ではなく、調査したその廃棄率を食品購入量の計算に使いましょう。

じゃが芋や玉ねぎは、大きさ別に調べておくと、廃棄率を使って計算する購入量の正確さが向上し、摂取量の正確さも向上します。購入先や購入食品の大きさの変更など、廃棄率に影響する要因が変化したら、廃棄率調査を再度することも忘れずに!

5 可食量と購入量を区別しないと食材の無駄や不足になります

栄養計算に用いる料理のレシピに示されている食品の重さ(質量)は、通常、可食部の質量です。

一方で、準備する(購入する)食品の質量は、廃棄部分を含めた質量が必要です。その質量は、廃棄率の値を使って計算できます。

購入量の計算式

廃棄部を含めた購入量(g)= レシピの質量(g)× 100 ÷[100-廃棄率(%)]

 

成分表の廃棄率が10%以上の場合には特に、給食施設やご自身で調べた破棄率を使いましょう。

たとえば、成分表の廃棄率が15%の食品で、給食施設で調べた廃棄率が10%の食品と、20%の食品について、可食部2kgを購入する場合を考えてみましょう。

 

成分表の廃棄率15%を使って購入量を算出した場合

2000g× 100 ÷(100-15)%= 2299 g

調査した廃棄率が10%で、これを使って購入量を算出すれば

2000g× 100 ÷(100-10)% = 2222 g

2299 g 購入せずとも、2222 g あれば十分とわかり、

調査した廃棄率が20%で、これを使って購入量を算出した場合には

2000g × 100 ÷(100-20)%= 2500 g

2500 g 購入しないと足りないことがわかります。

計算に用いる廃棄率の違いが大きく影響することを実感していただけたのではないでしょうか。

6 可食量と購入量を区別しないと味にも影響します

レシピを使った料理の実際)

もし、料理のレシピに示されている質量を購入し、それを料理し、レシピに示された調味料をレシピの質量だけ加えると、各食品は廃棄部位の質量分が不足するため、濃い味になってしまいます。

また、料理のレシピに示されている料理を作る場合、成分表の廃棄率を使って購入量を計算し、食品を購入しても、上述した理由により、購入量が不足あるいは過剰になっている場合があります。

そのため、購入した食品の廃棄部位を除いたあとで、食品の質量(料理するレシピの量)を計量することがレシピの料理の味を再現するコツです。

レシピ質量を計量せずに料理し、調味料はレシピに記載の質量を加えると,購入量の計算に使った廃棄率が実際よりも大きいと薄い味に、購入量の計算に使った廃棄率が実際よりも小さいと濃い味になります。

調味料は料理に加えてしまったら減らすことはできません

そこで、廃棄部位を除いてからの計量をしないで調理をする場合は、レシピに記載の調味料の全質量を10~20%減らして調味するとよいでしょう。そのうえで、味見をしてから残りを加減して加えると味つけの失敗を防げます。

以上のように、廃棄率を正しく理解して活用することは、無駄な購入を防ぐなど環境にもやさしく調味ミスを防ぐなどおいしい調理にもつながり、さらには栄養摂取量のより正確な算出にもつながるなどとてもたいせつなことです。

成分表の廃棄率を信頼しすぎず、適切に活用しましょう!

(栄養素の分析と異なり、廃棄率の測定はスケールがあれば、だれでもできます)


八訂 食品成分表2023

栄養計算ソフトほか全部で3つの電子版付録がついています
香川明夫/監修

私たちが日ごろ食べている食品にはどんな栄養素がどのくらい含まれているのでしょうか? 「食品成分表」はそのデータ集であり、女子栄養大学出版部では食と健康に関する最新資料とともに「本表編」と「資料編」の2分冊にとりまとめて毎年出版しています。

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