渡邊智子
淑徳大学看護栄養学部教授/文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会食品成分委員会主査代理
写真/堀口隆志
菓子パンの収載は四訂成分表からです
前回は食パンについてご紹介しましたが、今回は菓子パンをとりあげます。食品成分表では、食パンは穀類に載っていますが、菓子パンは菓子類に載っています。
菓子パン類が日本食品標準食品成分表に収載されたのは、四訂日本食品標準成分表(1982年公表:以下、四訂成分表)からです。日本では、あんぱんは丸形、ジャムパンは楕円形、クリームパンはグローブ形、チョコパンは円錐形で、販売されている場合が多いようです。
菓子パン類の収載値は計算値です
四訂成分表の収載値は、原材料配合割合と原材料食品の収載値から計算した値です。それぞれの菓子パンについて、パンと中身の割合も備考欄と食品群別留意点(リンク先p478-480)に記載しています。この収載値の計算方法と備考欄の記載方法は、成分表2020年版(八訂)まで継承されています。
一方、菓子パン類の原材料配合割合については、成分表が改訂される度に、パンの関係団体にお願いし、現状と合っているかどうかみていただいています。そして、必要に応じて変更しています。収載値は、原材料配合割合と原材料の収載値で計算するため、成分表の改訂に伴い収載値は変更されています。
成分表2020年版(八訂)では、菓子パン用の「パン」が収載!
成分表2015年版(七訂)の菓子パン類の計算に用いた食品は穀類のロールパンでした。一方、成分表2020では、菓子パン類の計算には、新しく菓子類に収載された「菓子パンあんなし」を使っています。これは、パンの関係団体から菓子パン用のパンはロールパンではなく、専用のパンがあるとご指摘があったためです。
図1に、ロールパンと菓子パンあんなしの原材料配合割合を示しました。赤は菓子パンあんなし、青がロールパンです。それぞれ、強力粉1等100gに対して加える原材料の重量を示しました。この原材料配合割合を使ってパンを作ると、成分表に収載されている2種類のパンを作ることができます。
原材料からみると、菓子パンあんなしは、ロールパンに比べ、食塩が少なく甘いことがわかります。きっと、今まで菓子パンの成分値の計算に、ロールパンを使っていたのは、なんだかしっくりしなかった! と思っていらっしゃる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ロールパンと菓子パン専用のパン(菓子パンあんなし)の収載値
ロールパンと菓子パンあんなしのエネルギー量と主な成分値を図2に示しました。
菓子パン用のパンである菓子パンあんなしはロールパンに比べエネルギー量が5%少なく、水分および利用可能炭水化物以外の成分も小さい値です。そのため、成分表2020の菓子パン類は、エネルギー、脂質、食塩相当量が、少し少なくなっています。
成分表2020年版(八訂)のあんパン(こしあん)、ジャムパン、クリームパン、チョココロネは、食塩相当量が少しだけ少なくなりました!
図3に、あんパン、ジャムパン、クリームパン、チョココロネについて、成分表2020年版(八訂)と成分表2015年版(七訂)の収載値(エネルギー、トリアシルグリセロール当量、食塩相当量を示しました。
成分表2020年版(八訂)の食塩相当量は、どの菓子パンも成分表2015年版(七訂)の半分以下です。といっても、0.4~0.5g減っただけなのですが……。それでも、食パンの食塩相当量に比べれば、菓子パン類の食塩相当量は、低い値であることが明らかになりました。
成分表2020年版(八訂)のあんパン、ジャムパン、クリームパン、チョココロネは、エネルギー量が小さくなりました!
成分表2020年版(八訂)のあんパン、ジャムパン、クリームパン、チョココロネのエネルギー量は、成分表2015年版(七訂)の90-96%の値です。チョココロネ以外の3種類の菓子パンのトリアシルグリセロール当量(八訂の値)は、成分表2015年版(七訂)の値の67-69% と小さくなっています。
一方、チョココロネのトリアシルグリセロール当量(八訂の値)は、成分表2015年版(七訂)の値の99%とほぼ同じ値です。チョココロネでは脂質量が変わらないのにエネルギー量が減っているのは、チョコレートクリームの配合割合と原材料割合を変更したためです。
菓子パンは、成分表2015年版(七訂)に比べ、少しだけ健康的に?変化しています。
じつは、あなたが食べているオリジナルのあんパン、ジャムパン、クリームパン、チョココロネの成分値も、食品成分表の菓子パンの値をもとに栄養価計算できます!
次回に、お話しします。
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