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食品成分表

Q4 食品の成分表示。同じ「食物繊維」でも測っている成分が違うことがあるって本当?

栄養と料理もっと知りたい! 食物繊維Q&A食品成分表

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もっと知りたい! 食物繊維Q&A

腸の健康を保つためにも積極的な摂取が推奨される「食物繊維」ですが、じつは食品に含まれる「食物繊維」の量(成分値)はいま見直されつつあります。2020年12月、「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」が公表されましたが、5年ぶりの全面改訂で、食物繊維はその定義から変わりつつあります。背景にはなにがあり、その変化をどのように理解すればよいのでしょうか。食物繊維をめぐる、気になるあれこれについて、穀物科学者の安井健さんにお答えいただきました。

『栄養と料理』2020年12月号(11月9日発売)で掲載の5つのQ&Aから、Q4をご紹介します。

解答 安井 健

やすいたけし●穀物科学者。理学博士。文部科学省科学技術・学術審議会臨時委員(資源調査分科会食品成分委員会)。1996年から食品成分表の策定作業に携わる。食品群「いも及びでん粉類、砂糖及び甘味類、豆類、種実類<草本>」を担当。炭水化物などが専門。

え FUJIKO

食品の成分表示。同じ「食物繊維」でも測っている成分が違うことがあるって本当?

A4 本当です。表示されている数値が示している化合物やその根拠を知りたい場合には、製造者や販売者に問い合わせるのがよいでしょう。

「食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)」の「別添 栄養成分等の分析方法等」9)の食物繊維の項には、2つの分析法、すなわち(1) プロスキー法(酵素-重量法)と(2) 高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)が掲載されています。

食品表示においては、食物繊維は、プロスキー法あるいは、プロスキー法で求めた食物繊維含量と高速液体クロマトグラフ法による低分子水溶性食物繊維含量の和で求めます。

したがって、後者による食物繊維量は、プロスキー法による食物繊維量よりも、低分子水溶性食物繊維の分だけ多くなります。

栄養成分表示では、両者の分析値を区別することは求めていないので、食物繊維の表示には、結果として2つの分析法による値が混在することになります。

また、前述(Q1Q2Q3)のように、食物繊維には多様な化合物が含まれるので、たとえば、かんてん(おもな多糖類はアガロース)とこんにゃく(おもな多糖類はグルコマンナン)のように、ある食品の食物繊維の成分と別の食品の食物繊維の成分とが、まったく異なることも充分に考えられます。

したがって、表示されている数値が示している化合物やその根拠を知りたい場合には、製品に表示されている製造者や販売者の問い合わせ先等から情報を得たほうがよいでしょう。

なお、食品表示で利用している高速液体クロマトグラフ法と成分表で利用しているAOAC 2011.25法とは異なる分析法ですが、それぞれの方法の特性は類似しているため、食品表示の低分子水溶性食物繊維には、成分表の低分子量水溶性食物繊維に含まれるものと同じような炭水化物が含まれます。

ほかのQ&Aはこちら!

Q1 食物繊維ってなに?
A1 ・・・その定義や作用は多様です。
Q2 「不溶性食物繊維」「水溶性食物繊維」との違いは?
またそれぞれの作用は? どちらをどのくらいとればいいの?
A2 巷でいわれているような両者の特徴や作用は、一概にはいえないことがわかってきました。
Q3 成分表には「低分子量水溶性食物繊維」と「高分子量水溶性食物繊維」があるけれど、それぞれなにを指すの? 
A3 前者は新たに採用した分析法によって測ることができるようになった難消化性オリゴ糖類を指し、後者は…
Q5 健康効果が期待できる食物繊維にはどんなものがあるの?
A5 特定保健用食品のうち…

参考文献

9) 食品表示基準について(平成27年3月30日消食表第139号)(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/ 最終閲覧日:2020.8.9).

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