本誌でもご紹介したとおり、私と娘のお気に入りは、スーパーで売られているコッペパンのような形の半焼き状態の白パンだ。2週間も3週間も日持ちのする状態でパックされて売られている。食べるときにオーブンで15分ほど焼くのだが、毎度焼きたてのような仕上がりで、これがうまい。しかも安い。
この白パンに、新鮮でみずみずしいノルウェー産バターをこれでもかと塗りつけ(どちらかというと、パンを食べているというよりバターを食べているという意識でのぞむ)、ラズベリー、ブルーベリー、コケモモ、カシス、ブラックベリーなどのジャムをちょこっとのせて食べるのだ。
「ジャムにするベリー類はすべて手作りしたもの」と本誌でも紹介したベリー類は、とにかく「夏場にせっせと」摘むのである。いったいどれだけ……?と思われるかもしれない。家族3人で摘んだベリー類はこんな感じ(写真参照↓)。中でもお気に入りはブラックベリー。そのまま食べるとぼんやりした風味なのだが、ジャムにすると気品のあるエレガントな香りが出て、素晴らしい。日本で生活していたころには想像もできなかったほどベリー類は豊富にあり、シーズンになるといつも収穫できそうな場所をチェックしている。
野いちごは、まさにワイルドで芳醇な香りで甘味もしっかり。これはアイスクリームにすると最強。凍らせた野いちご、ノルウェー産生クリーム(ノルウェーの乳製品はバターも牛乳も生クリームも清冽な口あたりでおいしい)、砂糖、をハンドミキサーでガーッと混ぜるだけ。
ペーターは街や森を散歩しながらも、なにかしら、つねに道端のものをつまんで食べている。街中の公園にたくさん生えているさくらんぼは、種類が異なる木はもちろん、同じ種類でも木によって全然味が違うので、片っ端から食べてみて「お気に入りの木」を探す。
西洋すぐりは完熟してくると甘くなり、そのまま食べてもおいしいが、青いうちは梅干し級のすっぱさ。よってペーターはまだ青い西洋すぐりで”お手軽梅干し”を作る。ノルウェー在住の日本人に食べさせても「完全に小梅でしょ?」と大絶賛される。
夏の終わり頃になると、収穫の対象は徐々にきのこへシフト。きのこについては夫婦ともベリー以上に真剣味が増し、毎週末のみならず、平日でも付近の森をうろうろ彷徨(さまよ)い歩く日々が続く。
子どもも、小さいころは年じゅういっしょに森を連れまわしていたが、小学生になってからは「また!?」と顔をしかめてあまりつき合ってくれない。それでも親の教育の甲斐あってか?うちの子ほどきのこにくわしい小学生はノルウェーでも珍しいのではないかと思われる。
本誌でも触れたが、ノルウェーには「自然享受権」というものがあり、私有の森でも勝手に入って、勝手にベリーやきのこを採取してよいことになっている。キャンプ程度であれば宿泊滞在も自由。「国土の自然はみんなのもの」というとてもプリミティブな価値観によるもので、スウェーデンやデンマークにもある北欧文化の1つ。ノルウェーに住み始めたとき、やたらめったら夫がどこでもかしこでもつまんでは食べつまんでは食べしているので「とっていいの???」とハラハラしていたのだが、理由を知って納得。とはいえ日本ではありえないことすぎて衝撃を受けたもの。日本と同じくらいの面積に、540万人しか暮らしていないという人口密度の低さもあるとは思うが、まさにわれらはその自然を最大に享受しまくっており、大自然への感謝を深めるばかりなのです。
クラシノ(株)kurasino.co.jp マーケティング・コンサルタント。徳島県出身、ノルウェー在住。32歳でフラフラと世界の旅に出かけ、以降あちこちフラフラし続けている45歳。趣味はきのこ狩り。好きなお酒は鳴門鯛生原酒とTALISKER。
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