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食品成分表

■連載【6】食品成分表の「エネルギー」の話(1) 「八訂成分表」では「エネルギー」が変わります

知れば知るほどおもしろい!「食品成分表」渡邊智子栄養学食品成分表

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「八訂成分表」では「エネルギー」が変わります

渡邊智子
淑徳大学看護栄養学部教授/文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会食品成分委員会主査代理

「日本食品標準成分表2020(八訂)」(以下、「成分表2020(八訂)」)の公表をお待ちかねだと思います。すでにエネルギー値が「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」(以下、「成分表2015(七訂)」)と比べて、変わることが周知されているので、気になっていることと思います。

 

すべての献立を新しい成分表で計算しないとだめですか?」の質問には、「大変だと思いますが、ぜひお願いいたします」がお返事です。きっと年度末に向かい、業務多忙なおりと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

成分表のエネルギー値は分析値ではなく計算値

食品成分表の成分は、日本語で表記していますが、エネルギ―は英語です。理由は定かではありません。

食品のエネルギー量は、分析しているわけではなく、エネルギー産生栄養素にエネルギー換算係数を乗じて計算しています。エネルギー産生栄養素量は、科学的に分析して得る値です。したがって、分析方法が同じであれば同一資料を分析した場合、同じ値を得ることができます。

一方、エネルギー換算係数は、いくつかあります。「成分表2015(七訂)」では、修正Atwater(アトウォーター)の係数、「日本食品標準成分表の改訂に関する調査」(科学技術庁資源調査会編資料)1)-4)による係数、FAO/WHO合同特別専門委員会報告5)のエネルギー換算係数などを食品により選択していました(「成分表2020(八訂)」では、選択することをやめました)。

また、栄養表示基準では、修正アトウォーターの係数を用いることとしています。

したがって、同じ食品のエネルギー値でも、成分表の係数と栄養表示の係数が異なるので、どちらを選択するかで異なるエネルギー量になります

「成分表2020(八訂)」でエネルギー値を出す計算に用いるエネルギー産生栄養素が変更に!

「成分表2020(八訂)」では、エネルギー計算に用いるエネルギー産生栄養素を、これまでの成分(従来の分析法あるいは計算法によるたんぱく質、脂質、炭水化物)から新しい成分(下記)に変更しました。これらの値の数値は、これまで選択してきた値に比べ、エネルギー産生栄養素の実際の摂取量に近いといえます。

たんぱく質
:アミノ酸組成によるたんぱく質
=各アミノ酸量に基づくアミノ酸の脱水縮合物の量(アミノ酸残基の総量)

脂質
:脂肪酸のトリアシルグリセロール当量
=各脂肪酸をトリアシルグリセロールに換算した総和(組成から算出)

炭水化物
:利用可能炭水化物(単糖当量)
=利用可能炭水化物量を単糖に換算した総和

なお、これらの新しいエネルギー産生栄養素が収載されていない場合は、従来の成分を選択しています。

「成分表2020(八訂)」では、新しく選択するエネルギー産生栄養素のエネルギー換算係数を以下のように決めています。

「成分表2020(八訂)」のエネルギー換算係数
 アミノ酸組成によるたんぱく質:4 kcal
 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量:9 kcal
 利用可能炭水化物(単糖当量):3.75 kcal

また、食物繊維総量は、新たに2 kcalとし、アルコールは、これまでどおり7 kcalです。

「成分表2020(八訂)」が公表されたら、糖アルコールや有機酸についてもご覧ください。

1) 科学技術庁資源調査会編:日本食品標準成分表の改訂に関する調査資料-日本人における大豆及び大豆製品の利用エネルギー測定調査結果-.科学技術庁資源調査所資料第70号(1979)

2) 科学技術庁資源調査会編:日本食品標準成分表の改訂に関する調査資料-日本人における動物性食品の利用エネルギー測定調査結果-.科学技術庁資源調査所資料第73号(1980)

3) 科学技術庁資源調査会編:日本食品標準成分表の改訂に関する調査資料-日本人における穀類の利用エネルギー測定調査結果-.科学技術庁資源調査所資料第92号(1981)

4) 科学技術庁資源調査会編:日本食品標準成分表の改訂に関する調査資料-日本人における油脂類の利用エネルギー測定調査結果及び主要食品の利用エネルギー値-.科学技術庁資源調査所資料第99号(1982)

5) FAO/WHO:Energy and protein requirements. Report of a Joint FAO/WHO Ad Hoc Expert Committee. WHO Technical Report Series, No. 522;FAO Nutrition Meetings Report Series.No. 52 (1973)

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