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管理栄養士は「食べて生きる体の仕組み」に介入する専門家! 『地域にもっと可能性がある! フリーランスで活躍したい管理栄養士の本』座談会 

栄養と料理女子栄養大学出版部新刊

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悩める管理栄養士のために本書を執筆したのは、病院経験もある開業管理栄養士、会社を設立し地域で活動する管理栄養士、大学教員の管理栄養士と、キャリアも専門も異なる3人。そしてその3人の伴走者は栄養は専門外のフリーランス編集者の川瀬佐千子さん。見本が手元に届いたばかりで感慨深い著者に、本の印象や気に入っている箇所、また執筆の思い出まで振り返る座談会を川瀬さんが聞き手となって開催&お届けします

2023年1月9日発売の『栄養と料理 2月号』には、著者3人による管理栄養士の未来を考える鼎談も掲載されますので、ぜひ合わせてお読みください!

撮影/中山文子

中田恵津子●管理栄養士。神奈川県職員として保健所や病院に勤務後、専門学校で管理栄養士の養成教育に携わる。現在はフリーランスの管理栄養士として、地域での活動のほか、企業の食や栄養改善事業のアドバイザーも勤める。 中田恵津子●管理栄養士。神奈川県職員として保健所や病院に勤務後、専門学校で管理栄養士の養成教育に携わる。現在はフリーランスの管理栄養士として、地域での活動のほか、企業の食や栄養改善事業のアドバイザーも勤める。
安達美佐●管理栄養士。2006年に栄養サポートネットワーク合同会社を設立。地域における診療所・在宅訪問での栄養指導システムの構築やオンライン栄養相談などを展開。管理栄養士を対象とした支援活動にも力を入れている。 安達美佐●管理栄養士。2006年に栄養サポートネットワーク合同会社を設立。地域における診療所・在宅訪問での栄養指導システムの構築やオンライン栄養相談などを展開。管理栄養士を対象とした支援活動にも力を入れている。
岩崎祐子●管理栄養士。静岡県職員として保健所等に勤務後、静岡県立大学大学院経営情報学研究科に進学しマーケティングを学ぶ。現在は愛知淑徳大学健康医療科学部健康栄養学科准教授として公衆栄養学を担当。研究教育に取り組んでいる。 岩崎祐子●管理栄養士。静岡県職員として保健所等に勤務後、静岡県立大学大学院経営情報学研究科に進学しマーケティングを学ぶ。現在は愛知淑徳大学健康医療科学部健康栄養学科准教授として公衆栄養学を担当。研究教育に取り組んでいる。

聞き手・文/川瀬佐千子(フリーランス編集者)

モヤモヤを抱える管理栄養士のみなさんに寄り添いたい

——お三方で構想を練り始めてから約3年、私が編集担当として一緒に作業を始めてから9ヵ月。ようやく、思いが本の形になりました! 『地域にもっと可能性がある! フリーランスで活躍したい管理栄養士の本』お手元に届いての感想からまずお伺いしようかな、と。

 

安達 パッと目に飛び込んでくる明るい表紙がすてきだな、と思いました。

中田 表紙をめくったところの黄色もいい。希望の色だなと感じました。

岩崎 私の第一印象は192ページある割にコンパクト、ということ。最初に「あんまり分厚いものではなくて、さりげなく手にとってもらえるくらいがいい」という話をしたな、と思い出しました。モヤモヤを抱えた人に寄り添う、ということがこの本のコンセプトだったので、本の作りも寄り添うようなものになってよかったです。これなら枕元に置いておいて少しずつ読んでもらったり、カバンの中に入れておいて通勤の合間に読んでもらったりできるな、と思いました。

——女子栄養大出版部のツイッターで12月の上旬に見本ができたことをツイートした際には、反響があってうれしかったですね。〈フリーランスで活躍したい管理栄養士の本」中の人3号〉(@FreeRD2022)というアカウントも開設されました。

岩崎 開設してすぐに反応があってびっくりしました。本が店頭に並んでしばらくしてから始めようと思っていたのですが、女子栄養大出版部のツイートやみなさんの反響を拝見して、これは中の人として発信しなくては! と予定外に早くツイートを開始した次第です。

——ツイートにも〈本の中では、活躍の場を広げる工夫も書いています。私も、本だけ書いて満足してしまうのではなく、ちゃんと発信してみようと思います。〉とありました。

岩崎 本の宣伝ではなく、モヤモヤを抱えている管理栄養士の皆さんに「私たちがここにいるよ、一緒に歩いているよ」という姿を見せたいと思ってるんです。

中田 私はみなさんの反応を拝見して、こうして本に興味を持ってくださる人、つまり管理栄養士の道を歩き続けようとがんばっている方がたくさんいるんだなということを改めて実感しました。あとは、思っていたより若い20代の方も関心を持ってくださっているのがありがたい想定外でした。一方で、刊行のお知らせをしたベテランの管理栄養士さんからもメールがきて「ぜひ今度、本の感想をおしゃべりする会をしましょう」と言っていただいたんです。ベテランの人も興味を持ってくれたことはとてもうれしかったですね。

安達  若い人もベテランの人も、みんな「管理栄養士としてもっと役に立ちたい」という気持ちを持っているんですよねただ、どうしたらもっと役に立てるか、という方法がわからなかったりするから、私たちの本に興味を持ってくれたんじゃないでしょうか。

法的な位置付けや仕事の意義を明らかにすることからモヤモヤをひもとく

——初めの打ち合わせで「管理栄養士が抱えているモヤモヤをひもときたい」というお話を聞いた時にはまだ明確にそれがなんなのか見えていなかったのですが、打ち合わせを重ねてまず管理栄養士という仕事の専門性の高さと意義、法的なバックグラウンドを理解できたことで、みなさんの迷いや悩みの姿が見えてきたように思います。この体験した過程がまさに「モヤモヤをひもとく」だったのかな、と改めて思っているんです。

中田 そうですね。だから、一番最初に管理栄養士の法律的な位置付けや仕事の意義を明らかにしたんです。法的な裏付けも意義もある仕事なのだということを伝えて、「そうだ、管理栄養士の仕事って食べて生きる体の仕組みに介入する仕事なのだ」とまず自覚してもらうことがモヤモヤをひもとく上で大事だな、と思ったんです。

——モヤモヤはどんなふうに分析し、まとめていったんでしょうか?

中田 私自身が抱えてきたことと向き合うということでしたね。私もかつて「栄養管理にかかわりたい」という夢を持って勉強したわけです。でも働き始めてみると、組織の中での自分の立場もわからなかったし誰にも相談もできないモヤモヤを抱えながら仕事を続けていくうちに、階段を一段ずつ上がるようにだんだんに「対象者の健康を維持できて初めて組織の目的が達成できる、それが仕事の意義、価値だ」と気づいていったんです。自分の仕事の価値を組織の中で認めてもらうような努力もしました。そういう自分が体験したことを、実践者として伝えていきたかったんです。

——とはいえ、考えてきたことや思いを原稿にまとめるということはまた別の苦労があったかとお察ししますが……。

中田 本当に! でも面白かったです。特に私自身が最近フリーランスという立場になったので、組織に属さない立場でどう伝えたら届くか、試行錯誤でした。安達さんと岩崎さんが書いたものを読みながら「なるほどこういう視点で書けばいいのか」と勉強にもなりました。

安達 私は、この本は読むみなさんも管理栄養士なので、共に歩く仲間としての目線で伝えるということを心がけましたね。

岩崎 私も意識したことは、知識を伝えるのではなく、共感の道を作っていくようにしようということ。自分の考えをただ述べるのではなく、届ける相手を想定して語りかけるという書き方は、私にとって新しい挑戦でした。

先を歩く者として体験し学んできたことを本を通じて他の人にも伝えたい

——実は私も、3名での共著という本を編集するのは初めてで、それぞれの方が書いた原稿をどんなふうに1冊にまとめていけばいいのか、やりながら模索していった感じでした。最初に何度も打ち合わせをさせていただいてしっかりとお話を伺ったことはやはり重要だったと思います。お三方の原稿を編集してまとめていくときも、だんだんにピースが埋まっていくのが目に見えるようで、苦労もしましたが今までにない楽しみも味わわせていただきました。

岩崎 法的な話から、モヤモヤをひもといたり、専門家としてのあり方や他の職種の人への接し方、実践的な知識や考え方の話まで、とても幅広い領域を扱ったので、改めて読み返してみると、それぞれ異なるキャリアを築いてきた3人だからこそ書ききれたと思いました。

安達 長年どう表現したらいいかずっと考えてきた管理栄養士の価値とはなにか、ということを旧知の中田さん、岩崎さんと力を合わせて文章化できたのは本当にうれしいです。

——それぞれに強い思いが本書には込められていると思いますが、とくに気に入っている部分やぜひ読んでほしい部分ってどこでしょう?

岩崎 手前味噌ですが、自分で担当した「相手の靴を履いてみるということ」(p.142〜)ですね。専門家として対象者さんに向き合う時に相手の立場で考えるということの重要性についてのコラムですが、これは私自身が地域で仕事をし始めた時から上司にずっと言われてきたことなんです。読んで感銘を受けた本や記事の言葉を絡めながら、改めて自分の言葉でまとめることができました。ぜひ多くの人に伝えたい内容です。

中田 「相手の靴を履いてみること」の前にある「他職種との関わりから生まれる管理栄養士の価値」(p.135〜)もぜひ一緒に読んでほしいですね。やっぱりこれは私が病院や保健所などいろいろな職場で働いてきて実感してきたことなんですが、「チームの一員として専門性を発揮し関わる他の職種の人の役に立つことで管理栄養士の価値は生まれる」ということを理解して、それぞれの場で管理栄養士の価値を生み出してほしいな、と思います。

安達 私は第1章の2項目「管理栄養士の資格はあるけれど……思うような仕事ができないのはなぜ?」(p.16〜)ですね。やっぱりここを読むことで、みなさんのモヤモヤがスッキリ晴れると思うんですよ。

中田 読んだ方が自身を鼓舞する力になるといいですよね。自分が努力して変わろうという前向きな力に。

——私はこの本の制作を通じて、管理栄養士という仕事の専門性の高さを改めて思い知り、もっと活躍できる職種なんじゃないかと思いました。しかしそこにはさまざまな障壁があって一筋縄ではいかないこともわかりました。ただ、本書には〈不満だけを吐露し、自ら動き出そうとせず、時が過ぎるのを立ち止まって見ているだけでは何も変わりません。〉(p.20)という言葉があります。この本に興味を持った方、手に取った方、ましてや読んだ方は、もう「立ち止まって見ている」人ではありません!その一歩に自信を持って、ぜひ次の一歩、そしてその次の一歩……と未来へ向かって「一歩」を積み重ねていただければと思います3人の著者が思いを込めて作った本書がきっとその一歩一歩の足元を照らすはずです。

 

 

 

 

■中田恵津子・安達美佐・岩崎祐子/著

■四六判 192ページ

■定価 1650円(本体1500円+税)

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〈予告〉栄養と料理2023年2月号(1月9日発売)

鼎談 管理栄養士が地域でもっと活躍するには?

~その課題と未来を考える~

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