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食品成分表

連載【22】「成分表2020年版(八訂)」の「炭水化物」と3種の「利用可能炭水化物」はこう使いましょう!(後編)

知れば知るほどおもしろい!「食品成分表」渡邊智子栄養学食品成分表

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渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長

え/佐々木一澄

第21回では、「成分表2020年版(八訂)」の「炭水化物」と3種の「利用可能炭水化物」の違いをお話ししました。今回は、3種類「利用可能炭水化物」の使い方をお話しします。

いっしょに考えてみましょう。最初に、「成分表2020年版(八訂)」の「炭水化物」の成分項目群を確認します。

表1に「成分表2020年版(八訂)」の、「炭水化物」の成分項目群を第21回と同様に抜粋しました。本稿での説明がわかりやすいように、成分名にアルファベットをふりました。

表1「成分表2020年版(八訂)」の炭水化物の成分項目群

1)「利用可能炭水化物(単糖当量)」の使い方と課題についてお話します。

①「利用可能炭水化物(単糖当量)」の「*」の秘密

「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)は、原則として成分表に記載されている各食品別のエネルギーの算出に用いられている成分項目です。

成分表では、「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)を食品のエネルギーの算出のために使った場合は、「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)の値の隣に「*」が付与されています。

この「*」の役割についてお話します。

この「*」は、「成分表2020年版(八訂)」で、食品のエネルギーの算出に用いられている、たんぱく質の成分項目群の「アミノ酸組成によるたんぱく質」、脂質の成分項目群の「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」には、付与されていません。この2つの成分項目の収載値は、成分表での全食品のエネルギーの算出に使っています。

きっと、なぜ、「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)は、収載値があるのに、エネルギーの算出に使われない場合があるの? と、ますます不思議に思った方も多いのではないでしょうか。

それは、「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)の収載値が、その食品のエネルギーの算出を行うために用いることが、不適切であると判断される食品があるためです。なぜでしょうか。

そのわけを、ご説明します。

成分項目群のたんぱく質群の「アミノ酸組成によるたんぱく質」と「たんぱく質」は、同じ試料を分析した値です。また、脂質群の「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」と「脂質」も同じ試料を分析した値です。それぞれの関係性は明確です。

一方、成分項目群の炭水化物群の「利用可能炭水化物(単糖当量)」と「炭水化物」は、同じ試料で分析した(炭水化物の場合は、差引き法により計算した)値ではありません。

そのため、「利用可能炭水化物(単糖当量)」の収載値はあるものの、その値をエネルギーの計算に用いるのは、適切かどうかを判断しています(に、その方法を簡単に記載しました)。その判断により、「利用可能炭水化物(単糖当量)」をエネルギーの計算に用いるのが適切な食品についてのみ、その値に「*」が付されています。「*」が付されていない食品は、エネルギーの計算では、「差引き法による利用可能炭水化物」を使っています。

これが、「利用可能炭水化物(単糖当量)」の「*」の秘密です。

「利用可能炭水化物(単糖当量)」をエネルギー量の算出に使うかどうかの判断

「利用可能炭水化物(単糖当量)」の成分値がある食品でも、水分を除く一般成分等の合計値と100 gから 水分を差引いた乾物値との比を算出し、その比が一定の範囲に入らない食品の場合は、その値をエネルギー量の算出に使うのは不適切と判断しています(詳細は、「成分表2020年版(八訂)」の資料 「エネルギーの計算方法」をご覧ください)。

このようなことから、「利用可能炭水化物(単糖当量)」は、「アミノ酸組成によるたんぱく質」や「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」に比べ、過渡期あるいは発展途上、今後の充実が期待される成分項目であるといえるのではないでしょうか。

 

②「利用可能炭水化物(単糖当量)」を栄養計算に使うとわかること

次に、「利用可能炭水化物(単糖当量)」を栄養計算に使うとわかることや、課題とその対応についてお話しします。炭水化物は、摂取すると単糖に分解され吸収されるため、「利用可能炭水化物(単糖当量)」は、実際に摂取される利用炭水化物に近い値といえます。レチノール当量やナイアシン当量のような値です。そのため、この値を用いて栄養計算すると、利用率を考慮した利用可能炭水化物の摂取量がわかるといえます。

③「利用可能炭水化物(単糖当量)」の課題と対応

「利用可能炭水化物(単糖当量)」の課題は、収載食品数が少ないことと、食品のエネルギーの算出に利用されていない食品があることです。では、これらの食品、つまり「利用可能炭水化物(単糖当量)」の項目に「-」が記載されている食品、および 「*」が付与されていない食品について、栄養計算では、どのように対応すればよいかを考えてみましょう。

「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)に「*」が付与されていない場合は、「差引き法による利用可能炭水化物」(C)に「*」が付与されているので、「差引き法による利用可能炭水化物」から「利用可能炭水化物(単糖当量)」を推計してみましょう。

表2に「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)と「差引き法による利用可能炭水化物」(C)のエネルギー換算係数を示しました。

 

表2 利用可能炭水化物のエネルギー換算係数

この表のエネルギー換算係数を用いて、エネルギー計算に「差引き法による利用可能炭水化物」(C)の値を用いた場合の、推定「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)の推定式を考えてみましょう。

 

推定「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)

= エネルギー計算に用いた「差引き法による利用可能炭水化物」(C)× 4 ÷ 3.75

≒ エネルギー計算に用いた「差引き法による利用可能炭水化物」(C)× 1.07

この式を用いて、推定「利用可能炭水化物(単糖当量)」を計算し、値を登録しておくのも一考です。

2)「利用可能炭水化物(質量計)」の使い方と課題

「利用可能炭水化物(質量計)」(B)は、糖を分離定量して合計した質量です。そのため、原則として、利用可能炭水化物の摂取量の計算に利用しましょう。

しかし、文科省の成分表2020年版(八訂)の「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)に「*」がついていない場合は、上述したようにその値をエネルギー計算に用いていないので、「差引き法による利用可能炭水化物」の値を用いて摂取量の計算を行ないます。

 

3)差引きに法よる利用炭水化物の計算方法と使い方

最後に、「差引き法による利用可能炭水化物」の使い方と課題についてです。「差引き法による利用可能炭水化物」(C)は、「炭水化物」(F)とは異なる成分です(「炭水化物」に「差し引き法による利用可能炭水化物」が含まれています)。この値は、単糖当量ではなく質量です。

「差引き法による利用可能炭水化物」(C)は、文科省版の「成分表2020年版(八訂)」の「利用可能炭水化物」の成分値に「*」が付いている場合(編集部注:女子栄養大学出版部の成分表でも同様)に、エネルギー量の計算に使われた値です。

そこで、「差引き法による利用可能炭水化物」の成分値に「*」がある食品は、この値を「利用可能炭水化物(質量計)」の値に置き換えて、栄養計算に使いましょう。なお、「差引き法による利用可能炭水化物」を「利用可能炭水化物(単糖当量)」に置き換えるための計算式は、上述しました。

おわりに

第21回および第22回では、成分項目の「炭水化物群」の「炭水化物」(F)と「利用可能炭水化物」(A~C)の違い,さらに「利用可能炭水化物(単糖当量)」(A)、「利用可能炭水化物(質量計)」(B)、「差引き法による利用可能炭水化物」(C)の違いとそれぞれの利用方法についてお話しました。

「成分表2020年版(八訂)」で初めて、「炭水化物群」の成分項目がセットで収載されました。なじみがない成分もあり、戸惑っている方も多いと思います。本稿をご覧いただき、各成分項目についての理解が深まることを願っています。

栄養計算では、それぞれが目的に応じて、3種類の「利用可能炭水化物」から選択して利用できます。各成分項目の定義を理解し「利用可能炭水化物」を選択し利用すること、計算結果を示す場合は、3種類のどの成分項目の値を用いたかを明記することが大切です。

お読みいただき、わからないことがあれば、遠慮なくお問い合わせください。食物繊維や糖アルコールについても機会を見つけてお話ししたいと思います。

コロナ感染症が猛威を振るい、気候も不安定な日々ですが、どうぞお身体たいせつにお過ごしください。

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