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食品成分表

【成分表連載28】新学期が間近です。栄養計算にどの項目を使うべきかおさらいしましょう

知れば知るほどおもしろい!「食品成分表」渡邊智子栄養学食品成分表

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渡邊智子 学校法人食糧学院 東京栄養食糧専門学校 校長

 

わたなべともこ東京栄養食糧専門学校校長。医学博士。千葉県立衛生短期大学、千葉県立保健医療大学、淑徳大学を経て現職。千葉県立保健医療大学名誉教授、千葉県学校保健学会理事長。文部科学省による日本食品標準成分表の策定に食品成分委員会委員等として30年にわたり携わり、成分表活用の研究・提言を行なう。千葉県食育推進県民会議委員として千葉県の食育ツール(グー・パー食生活ガイドブック等)の開発・普及も行なっている。

まだの方も、2022年度は成分表2020(八訂)を!

成分表2020(八訂)の特徴や活用についてお話しさせていただく機会が多々あります。まもなく、2022年度になるので、そろそろ、成分表2020(八訂)を使わなければと思っている方が多いのではないでしょうか。

いまだに、一番多い質問は、「成分表2020(八訂)でエネルギーを計算すると、これまでよりも減ってしまいますが、増やしてもよいでしょうか」「エネルギーと主要なエネルギー産生成分(たんぱく質、脂質、炭水化物)は、どの成分項目を選べばいいのか?」です。本連載でも何回か取り上げています(第8回16回17回18回22回23回)が、今一度、説明します。

文科省版の成分表2020(八訂)を使うと、エネルギーとエネルギー産生成分(たんぱく質、脂質、炭水化物)の組み合わせは、3つの方法があります(図1)。

図1 成分表2020(八訂)を使うエネルギーとエネルギー産生成分(たんぱく質、脂質、炭水化物)の組み合わせ

 

この3つのどれを選ぶかは、ユーザーの判断による選択になります。大事なことは、栄養計算結果には、どの方法あるいは成分項目を選択した値であるかを示すことです。また、栄養成分表示にも、成分表から算出された成分値である場合には、どの方法あるいは成分項目かの記載があるとよいなと思います。

栄養成分表示にどの方法かの記載がない場合は、2の方法によることがほとんどではないでしょうか。それは、文科省版の成分表では、1および3の方法の計算を行なうのは、手間がかかるからです(女子栄養大の『八訂食品成分表2022』は、2の方法はもちろんですが、1および3の方法手間をかけずに栄養計算ができるように編集されています)。

文科省版の成分表2020(八訂)の表頭の「エネルギーと主要なエネルギー産生成分(たんぱく質、脂質、炭水化物)」をご覧ください(図2)。

図2. 成分表2020(八訂)の表頭の「エネルギーと主要なエネルギー産生成分(たんぱく質、脂質、炭水化物)」

図2の成分項目からどんな場合にどの方法を選んだらよいか見ていきましょう。

将来に備えて、積極的に新しい八訂項目を活用したい場合

1. 成分表2020(八訂)の算出方法によるエネルギーと算出に用いるエネルギー産生成分

を使いましょう! 図2の項目が1の方法に用いるエネルギー値と、それを算出するためのエネルギー産生成分です。

 

〈成分表2020(八訂)のエネルギーの計算方法〉

エネルギー産生成分のアミノ酸組成によるたんぱく質、脂肪酸のトリアシルグリセロール当量、利用可能炭水化物は、未収載の食品があります。エネルギー計算に用いるたんぱく質と脂質の数値は、図3のように選択されています。

図3 成分表2020(八訂)のエネルギー計算に用いる「たんぱく質」と「脂質」

たんぱく質

●「アミノ酸組成によるたんぱく質」に数値がある → その値

●「アミノ酸組成によるたんぱく質」が(―)→ 「たんぱく質」の値

脂質

●「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」に数値がある → その値

●「脂肪酸のトリアシルグリセロール当量」が(―)→ 「脂質」の値

成分表2020(八訂)の炭水化物は、(利用可能炭水化物+食物繊維+糖アルコール)です。

利用可能水化物は、エネルギー計算では、図4のように選択されています

図4 成分表2020(八訂)のエネルギー計算に用いる「利用可能炭水化物」     

●「利用可能炭水化物(単糖当量)」が適切と判断された値※→ その値

●「利用可能炭水化物(単糖当量)」が適切でないと判断された値 → 「差引き法による利用可能炭水化物」の値

●利用可能炭水化物(単糖当量)が(―)→ 「差引き法による利用可能炭水化物」の値

利用可能炭水化物(単糖当量)のエネルギー換算係数は3.75、差引き法による利用可能炭水化物は4です。

※適切と判断する方法は本連載第22回をご参照ください。

 

 

〈成分表2020(八訂)のエネルギーを計算したたんぱく質、脂質、利用可能炭水化物の摂取量〉

たんぱく質と脂質は、図3で示したエネルギー計算に使った値を使います。

文科省版の成分表では、2列に数値がまたがっているので注意しましょう。1行に編集してあれば、栄養計算がスムーズになります。

利用可能炭水化物の摂取量についてはさらに注意が必要です。利用可能炭水化物(単糖当量)は、質量(重さ)ではありません。摂取量は質量なので、摂取量の計算には利用可能炭水化物(質量計)の値を使います。図5のように選択します。

図5 成分表2020(八訂)の摂取量の計算に用いる「利用可能炭水化物」             

●「利用可能炭水化物(単糖当量)」が適切と判断された値→ 「利用可能炭水化物(質量計)」の値

●「利用可能炭水化物(単糖当量)」が適切でないと判断された値 → 「差引き法による利用可能炭水化物」の値

●「利用可能炭水化物(単糖当量)」が(―)→ 「差引き法による利用可能炭水化物」の値

文科省版の成分表では、3列をみて判断しなければならないのでかなり大変です。利用可能炭水化物も摂取量を計算する値として1行になっていれば、栄養計算はスムーズです。

 

新しいエネルギーの活用を進めつつ、これまでのエネルギー産生成分と比較したい場合

2. 成分表2020(八訂)の方法によるエネルギーと成分表2015(七訂)の算出方法で用いるエネルギー産生成分

を使いましょう。

この方法を選択する場合は、図2のエネルギーとのエネルギー産生成分を選択すればよいので、文科省版成分表を使うと栄養計算はスムーズに行なうことができます。ただし、両者の関連性は1および3の方法に比べると低くなっています。

成分表2015(七訂)での計算結果との比較をしたい場合

3. 成分表2015(七訂)の算出方法によるエネルギーと成分表2015(七訂)の算出方法で用いるエネルギー産生成分

を使いましょう。

しかし、図2を見るとわかるように成分表2020(八訂)の第2章の本表には2015年版(七訂)の算出方法によるエネルギー量が見あたりません。これは文科省版成分表の第3章(リンクPDFのp.527~601。351枚目から425枚目)に記載されています。計算のためにそのページを見る必要があり、大変手間がかかります。図2の表にこの値も加わっていれば、この方法を選択した場合の栄養計算がスムーズです。

そこで、ユーザーのためには、エネルギーとエネルギー産生成分(たんぱく質、脂質、炭水化物)の組み合わせの3つの方法で計算するために成分表2020(八訂)が編集してあれば便利です。

1および3の方法を行なう場合の、手間をなくす工夫をした表が図6です。

図6 栄養計算を行なうための表頭(エネルギーとエネルギー産生成分)

は、1. 成分表2020(八訂)の方法によるエネルギーと算出に用いるエネルギー産生成分の方法で使うセットです。どの項目にも数値が入っています。

2.成分表2020(八訂)の算出方法によるエネルギーと成分表2015(七訂)の算出方法で用いるエネルギー産生成分の方法では、のエネルギーとのエネルギー産生成分を選択します。

3. 成分表2015(七訂)の方法によるエネルギーと成分表2015(七訂)の算出方法で用いるエネルギー産生成の方法では、のセットを選択します。

このような編集を行なっている成分表を入手すれば、1、2、3のどの方法での計算も可能です。ユーザーの皆さんのお悩みが解決できます。

たとえば、女子栄養大学出版部の『八訂食品成分表2022』は、1、2、3のどの方法での計算も可能です。選びやすいように、図6とに分けてそれぞれ集め、図7ように収載しています。赤字で注意書きを示したように、右側の「七訂(2015年版)のエネルギーの算出方法に基づく成分(参考)」は、成分表2015(七訂)の数値という意味ではありません。の方法ののセットです。左側の方法ののセットが集められています。の方法の場合には、左側ののエネルギーと右側ののエネルギー産生成分を使うことになります。

図7 『八訂食品成分表2022』(女子栄養大学出版部)の表頭

1から3の選択でお悩みの場合は、本連載第23回でご紹介したように、1と3の両方の方法で栄養計算をし、1の方法での活用を進めながら、3の値を手元資料とする(あるいは当面利用する)と、対象者のアセスメントや給与目標量に対しての考察がしやすくなります。

まだの方も、4月からはぜひ、成分表2020(八訂)を使って栄養計算しましょう。

《お知らせ》

『八訂食品成分表2022』の活用をじっくり学ぶチャンス!

渡邊智子先生による食品成分表のオンライン3日間集中講座が開催されます。見逃し配信付き!

詳細・お申込みは主催の㈱オフィス田中のサイトをご参照ください。

*女子栄養大学出版部では、本件の参加申込を受け付けておりません。


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